ホープレス・チャント-Love your enemies-
開演
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喋り声1つない教室。聞こえてくる音と言えば、時計の針が時間を刻む音に旧式の冷房の音、ペンを走らせる音に……たまに寝息ぐらいしかない。しかして教室内の雰囲気は静寂とは言い難く、全体がどことなくソワソワとしているかのようだった。
「ペンを置いて。これからプリントに触れないように」
そうして先生の揺るぎない言葉が教室に響き渡ると、生徒たちは三々五々にペンを机に置いていく。本来ならばそれは死刑宣告にも等しいものだったが、生徒たちの表情に悲しみの感情は見てとれない。それどころかウズウズと身体を揺らしているものすらいて、その瞳は、まだかまだかとタイミングを伺っていた。
「……うん。それじゃあ、まだテストをやるところもあるから、早く帰るように」
「テスト終わりおめでと〜!」
「おめでとうございます」
「お疲れさま」
そして気づけばテスト終わりのお祝いという名目で、行き着けの喫茶店にてリズの音頭とともにお冷やで乾杯していた。もはや7月も下旬といったところで、身体全体を冷やす冷水はまるで聖水かと錯覚させるほどのものだった。特に暑さが苦手らしいルクスの消耗が予想以上で、この喫茶店に来るまでに倒れてしまうのではないか、とちょっと心配になったほどだ。
「……ルクス、大丈夫?」
「はい、ご迷惑おかけしました」
お冷やをちびちびと飲むルクスの様子を見るに、どうやらもう大丈夫らしい。テスト終わりのお祝いと言っても、選択している授業の関係から揃って終わるのはこの三人くらいで、シリカなどはもう早々に終わっていたりする。逆にまだ学校に残ってペンを走らせているのは、キリトやアスナのような名門への進学組だろう。
「凄いですよね、キリトさ……ん。海外への留学も考えてるなんて」
「……当然のように一緒に行く気のアスナもな」
確かにユウキやユイのためにオリジナルのガジェットを開発していたりしていたが、まさか海外の本場に留学も考えている程に、キリトがVR方面への進学を本格的にしているとは思わず。そんな規格外な進学先にもかかわらず、当たり前のようにキリトと同じ進学先を狙っているアスナも含めて、同年代のメンバーは多少なりとも衝撃と影響を受けていた。
「ルクスはさ、キリトたちみたいに夢はあったりするの?」
「ええと……キリトさんたちほど立派なものではないんですけど、保育士に興味があって」
「へぇ……なんか目に浮かぶようね」
「確かに」
確かに幼児ぐらいの子供に囲まれるルクスの姿というのは、目を閉じるまでもなく簡単に想像が出来た。とてつもなくその姿は似合っていたものの、自分の未来図が想像されるのが恥ずかしいのか、ルクスがぶんぶんと手を振っていて。
「わ、私のことなんかより……リズにショ
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