最終章
最終節―全ての救い―
その体において弱者、敗者
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た者として、その“宿命”をやり遂げなければいけなかった。
そして、はたまた何かの間違い。
彼は辿り着いて“しまった”のだ、上り得る最強の座に。
だから、彼は“つい”遊んでしまった…世界1つと10万の人間の命で。
自分は相応しくない力と分かっていながら、使わずにはいられなかったのだ。
「『我、強き者。我の導きに答えよ。我、弱気を護る者。我の言葉に答えよ」
あぁ、きっとこれでは駄目だ。
これでは“救えない”。
彼を救えるのは、“弱者”であり“敗北者”だけなのだから。
「『消えろ』」
そう、彼を救いたいのなら“弱者”であり“敗者”であるべきだ。
そう、皆を救いたいのなら“強者”であり“勝者”であるべきだ。
なら、“全てを救おう”。
身に纏う神気は“在り得ない”。
手に持った剣は“必要がない”。
体に巡る魔力は“価値がない”。
鍛え上げた体は“資格がない”
本来の自分はそれを持つ理由が“ない”。
「『現れろ』」
けれど。
身に纏う優しさは“存在してる”。
手に持った右手は“必要がある”。
身体に巡る痛みは“価値がある”。
鍛え上げた精神は“資格がある”。
痛みを訴え続けるその心は、鍛え続けるその精神を持つ理由は“ある”。
これはソウヤではなく蒼也が育て上げたものだ。
これはソウヤではなく蒼也が痛み続けたものだ。
「『私は弱者として、敗者となろう」
その身に宿す物は何もない。
その身体はあまりに“脆く”、あまりに“貧弱”。
体同士の戦いにおいて、この体は“勝ち”を知らず“負け”のみを知るだろう。
「私は強者として、勝者となろう』」
その心に宿す物は多くある。
その精神はあまりに“硬く”、あまりに“昂然”。
心の在りようにおいて、この心は“負け”を知らず“勝ち”のみを知るだろう。
雪のように儚く脆い身体を持ちながら、その心が持つのは圧倒的な救い。
「――――ッ!」
言葉も発せず、ただ顔を歪めに歪めながら突撃するウィレスクラに、蒼也は何も持たない両手で“何か”を握る。
非力で、脆く、貧弱なその身体に為すのは――
「“強者に死ヲ”――!!」
「“勝者に救を”――!!」
――常に勝利を挙げながらも、常に孤独だった男を救うことだけだった。
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