最終章
1節―超常決戦―
鳳仙鬼炎と癒しの手
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穢れは浄化」
狂ったように同じ単語を呟きだすラファエルは、先ほどまでの気怠さが全く感じられない。
ただ、限界ギリギリまで目を見開き両手で首を掻きむしっていた。
皮膚が破れ、血が出ては首元が修復され、爪が割れ、血が出ては指が修復される。
狂っては死に、正常に甦っては狂う。
異常な輪廻をたどり続けるラファエルに、ナミルは嫌悪感を押し殺せない。
「アァ、“癒さなきゃ”」
「――――ッ!」
掻きむしり、爪を割り、精神が狂いながら再生する。
何度も爪が割れ皮膚が裂かれ、それでも“手が血塗れになっていない”。
異常な正常、正常な異常。
それを判断できない、彼は正に“狂人”だった。
「“癒されろ”、ナミル」
何の前触れも無く、唐突にナミルは“癒される”。
炎で固めた血液は元に戻り、炎で繋いだ筋肉は元に戻り、炎で焼いた皮膚は生まれた直後のような美しさに戻った。
―……やっぱりか。
目の前の“狂い”に眉を潜めながら、ナミルは自身の仮説が正しかったのだと悟る。
“癒されすぎた”のだ。
ラファエルの行う“癒し”とは、細胞の活性化のことだ。
しかも、“身体に何の負担も掛からない”、ローコストの活性化。
細胞の寿命を短くせず、そのままの状態で活性化させ古傷ですら治してしまう。
それが本来の“ラファエルの力”。
だが、その“癒し”も度が過ぎれば毒となる。
通常のままで活性化が行われれば、細胞が暴走し増えた細胞が行方を捜して――
――内側から爆発するのだ。
「……お前は必ず“癒す”ぞ」
気付けば、ラファエルは正常に戻っていた。
いや、“表面のみ”正常に戻っていた……というべきか。
彼の瞳に宿すのは、異常なまでの狂った“使命感”。
「炎で癒すなんてとんでもない。癒しは心地よく在るべきだ、癒しは気持ちよく在るべきだ、癒しは美味しく在るべきだ、癒しは無垢で無悪で在るべきだ」
幾度も誰かを癒してきた彼は言う、「癒しとは快いもの」だと。
確かに、心地よければなお良い。
確かに、気持ち良ければなお良い。
確かに、おいしければなお良い。
確かに、無垢で無悪ならばなお良い。
――けれど、それに固執する必要なんてどこにもない。
ナミルは自身の纏う炎で、あえて“自身を焼く”。
「ぐッ……!!」
「なんていうことをッ!」
間違ってなどない。
なんていことでもない。
これは“浄化の炎”なのだから。
戦いによって、自分の身は血で染まりすぎたのだとナミルは思う。
だから、これはその罪を浄化する炎だ。
間違ってなどない。
痛む体で、焼ける身体で、罪に押しつ
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