第56話<大和撫子>
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ようで母親が玄関に出る。
そのうちに仏間へ入れ替わり立ち代わり人が来て拝んでいる。
「あれは?」
青葉さんが小声で聞いてくる。
「ウチは本家だからね。お盆になると仏壇に線香を上げに来る近所の人が居るんだよ」
「なるほど……」
さすがに情報通の青葉さんも、お盆の風習を実際に見る機会は、ほとんど無かったか。それでも写真を撮りに行かないのは彼女なりに礼をわきまえていると言えるだろう。
「しかし、うちの仏壇を参りに来た人は驚いただろうな。真っ昼間から女性が大勢で宴会しているから」
私はグラスを片手に呟いた。苦笑する青葉さん。
私は続ける。
「でも艦娘も受け入れる懐の広さが、この町にはあるから大丈夫だ」
「そうなんですか?」
「ああ、ここは港町だからな。海に関わる者は誰でも受け入れる土地さ」
そう言いながら私は自分でハッとした。
「そうだな。私も境港の人間だ。もう堅苦しいのは止めよう」
そう思うと、急に気楽になった。
ふと祥高さんと目が合うと、彼女は微笑んでいた。
すると利根が聞いてくる。
「司令殿は、お酒は飲まぬのか?」
そう、私のグラスに入っているのは、お酒ではなく普通の麦茶だ。
「ああ、昔から飲まないね……ていうか、おいお前、顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」
「案ずるな。吾輩は強いのじゃ」
「いや、そういう問題じゃないと思うが」
そう言いながら周りを見ると、比叡は早々に酔い潰れている。ただ利根を筆頭に強い連中も居るらしい。
五月雨と寛代は最初から飲んでいない。まぁ彼女たちは年齢的にも問題ないだろうが何故かホッとした。
「あれ?」
いつの間にか父親が末席に居た。母親に聞くと廊下で青葉さんに誘われたらしい。
「やるな」
最初は青葉さんにイロイロ、経歴などを聞かれたらしい。
そのうちに利根が加わり、そこに山城さんも合流。
少し時間が経って、その席を立った青葉さんに私は聞いた。
「何を話していたんだ?」
「当然、お父様がお得意な航空機のご教示を賜りましたよ」
「ああ、なるほど」
それで利根が来たのか。
「でも航空機といえば日向だろうに?」
私が疑問に思うと青葉さんが私に近づいて囁くように言った。
「ホラ、山城さん日向さんに対抗していたでしょ?」
「あ?」
何だよ、それ?
「それに山城さん、渋い男性が嫌いじゃないみたいです」
「は?」
それは私の父親のことか? よく分からないな。
洋間は、お酒を飲まないグループ……私と祥高さんと寛代、それに五月雨に分かれていた。
比叡は既に轟沈し、龍田さんは金剛と上手に嗜んでいる。
私はちょっと浮いている日向に声をかけた。
「日
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