暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第172話 蝶の羽ばたき
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
値となるのは間違いない。

「大体、その能力をくれたのがオマエさんを転生させた神様なら、その能力で俺をどうこうする事はかなり難しいと思うぞ」

 そんなお気軽に貰える能力。まるで試供品として提供される粗品程度の能力で、どれだけ長い時間、世界を歩んで来たのか分からない魂に刻み込まれた記憶を蘇らせた……最終的にはその神様自体を封印して仕舞う心算で居る俺を倒す事は。
 何故ならば――

「その神様自体が、もし自分に対してその与えた能力を振るわれた場合でも自分が死なない程度に抑えて能力を与えている可能性の方が高いからな」

 至極一般的な答えを返す俺。そりゃ当たり前。何処の世界に自分を殺せる能力を他人に与える存在が居ますか、って言うんだ。
 長いこと生きて来た心算だが、そんな自暴自棄となった神と呼ばれる存在に出会った事は未だかつて一度もない。大抵の場合、その神と呼ばれる奴らの方が生に対する執着心が強い物だったぐらいなのだから。
 もっとも……。
 もっとも、此奴に能力を与えた相手が這い寄る混沌だった場合は、もしかすると自らを倒して仕舞えるような能力をこの匿名希望のチンチクリンに対して与えている可能性もゼロではないとも思うが。
 但し、今の此奴。匿名希望のチンチクリンが精霊を友とする事も出来なければ、問答無用で使役する事も出来ない。所詮ハルケギニア独特の系統魔法の使い手なので、其処から推測すると、とてもではないが見鬼の才を持っているとも思えない人間である事は間違いない……と思う。
 つまり、精霊の存在を感知出来ず、当然のように友とする事が出来ない以上、精霊の護りを身に纏う事は絶対に出来ないので、もし何かの拍子に這い寄る混沌と戦う事となったとしても瞬殺されるのがオチとなるのでしょうが。

 非常に気まずい沈黙が戦場を包む。
 未だ能力アップ系の術の行使が続いているが、幾ら能力を上げたとしても奴が有機生命体である限り、俺と正面から戦っても勝てる見込みはない。

「さて、少し余計な時間を使って仕舞ったが、そろそろ先に進ませて貰おうか」

 素直に道を開けて貰えると非常に助かるのだが。
 最後通牒。これ以後は戦いに成るしかないと言う意味の言葉。
 但し、口調やその内容とは裏腹に、俺はこの目の前の道化を本当に倒して仕舞って良いのか実を言うと迷って居たのだが……。
 確かに簡単に倒して仕舞える相手だと思う。更に言うと、表面上は良く分からないが、それでも能力アップ系の魔法の行使を止めない以上、この匿名希望のチンチクリン自身に未だ戦う意志はあるのだと思われる。

 ただ……。

 ただ、非常に曖昧な感覚なのだが、今まで敵対して来た相手と比べるとどうも雰囲気が違うのが気にかかる。どうにも言葉に出来ない、心の奥深くに何かが引っ掛かる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ