第7章 聖戦
第172話 蝶の羽ばたき
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
苛まれながらも、しかし、この迷える子羊に有無を言わせぬ無慈悲な一撃を与えて無力化する事は、流石に俺の所属する洞の戒律に違反する可能性があるので……。
如何にも面倒臭いですよ感を醸し出しながら……。具体的には口をへの字に曲げ、視線は目の前の道化の斜め四十五度ほど前方の足元に。右手で頭を掻きながら――
「なぁ、チンチクリンさんよ。アンタ、本当にそんなショウもない能力が実戦で有効だと本気で思っていたのか?」
例えばプロ野球のエースが投げる直球は時速百五十キロ以上。こいつと、プロボクサーのパンチ力は二百キロ以上。この場合、どう言う数値に差が現われる?
プロテニスプレイヤーの二百キロオーバーのファーストサーブ対幕内力士のぶちかましの勝負は? ちなみに幕内力士は軽トラ程度なら跳ね飛ばす事も出来るらしい。
それに人間の場合は機械じゃないから、その時々に因って結果が違う事もある。握力を計る時に一度目の計測結果よりも二度目の方が結果の良い時があるのがその例かな。
――そう話し掛ける俺。そして相手に立ち直る機会さえ与える事もなく放つ追撃の一打。
「まして火事場の馬鹿力の例もある。身体が壊れて仕舞う事を恐れて無意識の内に脳がリミッターを掛けている場合などはどう言う数値的な判断を下すんや?」
最早憐みにも似た視線で目の前の道化者を見つめながら、そう問い掛ける俺。
そう、俺が目の前の相手を恐れなかった最大の理由はコレ。確かに強化系の魔法により身体能力が強化され続けていた事に気付いてはいた。
しかしソレだけ。此奴の能力では世界にあまねく存在する精霊を従える事が出来ない事も、周囲の精霊の反応から理解出来て居た。
そりゃ関節や筋肉のすべてを金属やセラミックなどに置き換える事が出来ない以上。体液を瞬間に沸騰させない為の処置にも限界がある以上、いくら強化系の魔法を行使し続けていたとしても現実の身体の動きや強度に関しては自ずと限界と言う物が存在する、と言う事。
つまり、どれほど能力をアップさせて行ったとしても、此奴の能力の限界は有機生命体の限界まで。体温で言うのなら、タンパク質が変質する四十二度が限界。そして俺やタバサ。それに長門有希の能力の限界はその更に向こう側。
そもそも俺やタバサが精霊の護りもない状態で、全速力で走り出せば脆弱な人間の身体では一歩目で足が砕ける。仮にジャンプが出来たとしても空中で身体が潰れて燃え始める。
俺たちの能力と言うのはそのレベルの能力。
通常の物理現象が支配する世界の中で生きているチンチクリンと、それを越えた神の領域で戦って来た俺たち。これでは最初から立ち位置が違い過ぎて能力の数値化など不可能でしょう。
もし無理に数値化するとするのなら、十の数十乗倍……などと言う天文学上の数
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ