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蒼き夢の果てに
第7章 聖戦
第172話 蝶の羽ばたき
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ロリーは四千キロから五千キロカロリー。それ掛ける三百六十五日×生きて来た年数分。
 関わって来た人間の数は分からないが、そんなアロハシャツやバーミューダパンツのような洋服をこのハルケギニアの職人が作る事が出来る訳もないので、それもオマエさんのアイデアやな?」

 そもそもこのハルケギニア世界にファスナーは未だない。……と言うか、地球世界の旧日本軍の軍服にすら付いていなかった物が、中世ヨーロッパに等しい技術レベルのハルケギニアにある訳がない。
 大体、余程の味音痴。いや、むしろ悪食と言うレベルの日本人でなければこのハルケギニア……中世ヨーロッパの食生活に耐えられるはずはない。少なくとも俺は、単調な味付けのハルケギニア世界の料理では満足しなかったし、更に言うと、中には涙を隠して無理矢理に丸呑みしなければならないクラスの代物さえ存在していた。まして此奴は前世の記憶を持った状態で転生して来たと言い切った以上、前世では俺と同じレベルの食生活を営んでいたはず。
 此奴の見た目……走るよりも転がった方が素早く動けるような体型の人間が食事に無頓着な訳はない。そのような人間が同じ重さの黄金と交換するしか方法がない胡椒を手に入れるとか、砂糖の大量購入とか、更に其処から一歩余分に進んで大豆から醤油や味噌を作り出すなどと言う事を行って居る可能性すら存在していると思う。

 どう考えても、此奴がこれまでの人生で一切、世界と関わり合う事もなく暮らして来たとは思えないのだが。

「確かに、そのひとつひとつは小さな齟齬に違いない。しかし、それが小さな齟齬だったとしても少しずつそれが蓄積される事により、やがては大きな歪みとなる」

 何処の国で産まれたのか知らないが、オマエさんの知っている歴史の流れから外れだしたのは産まれてから数年経った後の事ではないか?

 普段の自らの声に比べると心持ち低いトーンの声。所謂、よそ行きの声でそう問い掛ける俺。何時もなら無意識の内に相手を睨むようになって仕舞う視線も出来るだけ焦点を合わせず、射すくめるような、と表現されるタイプの視線を送らないように心掛けながら。

「北京で発生した蝶のはばたきが一か月後のニューヨークで嵐を巻き起こすと言う。
 其処から考えると、オマエさんの場合は生きて行くだけで、それよりもずっと大きな影響を世界に対して与え続けて来たんだ。そりゃ、歴史に悪影響だって与えて当然だろう?」

 本来接する事のなかった情報。その情報に人々が接触する事によってその分だけ余分にその人物の知識は増大する。その僅かな知識の蓄積が更なる新たな知識を産み出す可能性が増大して行く。
 例えば、去年の秋以降このハルケギニア世界で大流行しているペストの正しい予防方法や治療法を俺はガリアの医療関係者に伝授して行ったが、この歴史の改
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