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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十話 混迷
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節が有ります」
彼方此方でざわめきが起きた。中には信じられないというように首を振る者もいる。
「帝国が混乱しているならイゼルローン要塞を攻略するべきではありませんか。帝国は敗戦により兵を大量に失っている。効果的な防衛は難しいのでは? イゼルローン要塞を奪取するチャンスです」
ガイ・マクワイヤー天然資源委員長だ。顔面が紅潮している、興奮しているのだろう。トリューニヒトの顔からは先程までの得意げな表情は無い。面倒な事を言い出したと思っているのだろう。
「軍はイゼルローン要塞攻略を考えていない。軍の基本方針は敵兵力の撃破だ。要塞攻略よりも敵兵力の撃破の方が帝国に効率良く損害を与えられると考えている。前回の戦いを振り返って見れば妥当な考えと言って良い」
「方針を変えるべきではないかね。帝国を打倒するのであれば待ち受けるのではなく踏み込むべきだろう」
阿呆、それをやれば同盟は破滅する、分からないのか。いや、分からないのだろうな、私もヴァレンシュタインに指摘されるまでイゼルローン要塞攻略が危険であることを理解していなかった。
「前回の戦いでイゼルローン要塞を攻略するべきだったのだ。そうしていれば今回の混乱に乗じて帝国に大きな打撃を与える事も可能だっただろう」
ボローン法秩序委員長が意地の悪そうな笑顔を見せている。この男はトリューニヒトを困らせるためなら裸踊りだってするだろう。
「要塞を攻略しなかったのは軍の謀略の一環でもあったのだ、あれが有ったから今の帝国の混乱が有る。それを無視してもらっては困る」
トリューニヒトが部屋を見回しながら言った。ボローンに同調する人間が現れる事を防ぐつもりだろう。
「私は軍の方針を支持します。待ち受けて撃滅する、大いに結構。これ以上の戦争拡大は反対ですな。これ以上戦火が拡大すれば国家財政とそれを支える経済が破綻する、到底賛成できない」
「しかしこれは絶対君主制に対する正義の戦争だ。不経済だからと言ってただ敵を待つというのはどうだろう。多少の無理をしても踏み込むべきではないのか」
頼むから口を閉じてくれ、マクワイヤー。それと皆こいつの馬鹿な意見に同調するな、頷くんじゃない!
「私も戦争拡大には反対だ。戦争が拡大すれば現在減りつつある教育や職業訓練に対する投資が更に削減されるだろう。今でさえ労働者の熟練度が低くなり社会機構全体にわたってソフトウェアの弱体化が進んでいるのだ。これ以上弱体化が進めば社会機構の維持そのものが難しくなる」
やれやれだ、私とホアンがトリューニヒトを援護するとは。出来るだけトリューニヒトとは距離を置くようにしていたのだが……。しかし戦争拡大論を放置は出来ん。
「そこで提案するのだが軍に徴用されている技術者、輸送および通信関係者の内から四百万人を民間
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