巻ノ九十五 天下の傾きその十
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「それはです」
「まだ待つか」
「そうされて下さい」
「それではな」
「まだ暫くお待ち下さい」
「大助にも学問をしてもらいたいな」
「そしてですね」
「そうじゃ、確かな者に育ってもらいたい」
「文武を備えた」
「心もな」
それもというのだ。
「即ち心技体を全て兼ね備えた」
「拙者以上の武士になってもらいたい」
幸村は我が子を見つつ微笑んで述べた。
「是非な」
「それでは」
「大助の物心がついたならじゃ」
その時はというのだ。
「是非な」
「武芸も学問も」
「教えたい」
「そうですね、しかし」
「拙者はじゃな」
「旦那様は優し過ぎます」
妻だけあってだ、幸村のその気質がわかっていて言うのだった。
「どうしても」
「だからじゃな」
「十勇士の方々もまた」
「どうもな」
「武芸は天下無双であられても」
一騎当千と言ってもいい、幸村も含めて彼等にはそこまでの強さが確かにある。だが彼等はそれでもというのだ。
「そのご気質は優しく」
「厳しいことはじゃな」
「戦の場ではともかく」
「うむ、共に激しく汗を流すが」
「それでもですね」
「お互いに怒鳴ったり殴ったりすることはない」
修行の時にというのだ。
「決してな」
「厳しいことを言われることも」
「ない」
そうしたこともだ、幸村自身が言った。
「どうもな」
「今も大助に甘いですし」
「甘過ぎるか」
「旦那様らしいですが」
「だからか」
「はい、若し大助を天下一の武士にされたいのなら」
「父上が言っておられた」
幸村は妻に父のことも話した。
「厳しいことはな」
「義父様がですね」
「されるとな」
「そうですか、では」
「そこは父上にお任せするか」
「それがよいかと」
妻は幸村に微笑んで答えた。
「旦那様ではやはり難しいので」
「厳しくすることはじゃな」
「はい、ですから」
「ではな」
「そのことはそうされて」
「そしてじゃな」
「旦那様と十勇士の方々はそれぞれのやり方で」
幸村達のそれでというのだ。
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