変身-トランス-
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。消化などしても間に合うはずもなかった。
「いやあああああああ!!!」
その事実が頭に刻まれ、ずっとそばにいると思っていた人が…たった一瞬で、消え去ってしまった。愛梨はその事実を認識させられたあまりに、絶叫した。
「そんな…!!」
タバサは、守ろうとした同学校の先輩を守れなかった自分に対して憤りを覚え、未熟さも痛感した。こんな悲劇が起こらないために自らの武術を、部活や自主練を積み重ねながら頑張ってきたのに、結局最悪の結果を出してしまった。『また』自分は…こうして人が壊れていくのを見せられるのか。これ以上見たくなかった、人が狂わされていく姿。たった一度見ただけでもうたくさんだったのに…。
だがその時、彼女は炎の中であるものを見た。黒い人影がちらついている。もしや、まだ彼は生きているのか?
どっちにしても確かめなければ。タバサが指笛を鳴らすと、今度は空から一匹の竜が飛来する。
「シルフィード、足を止めて!私は火を消す!」
「きゅい!」
この科学文明が発達した世界で、伝説の生き物とされているはずの竜だが、タバサはその竜をうまく飼い慣らしているようだった。
その竜、シルフィードは言われた通り、ナメクジの怪物と対峙する。見れば見るほどなんともおぞましい姿だ。しかも意外に知能がある。こちらが自分を警戒しているのに気付いているのか、すぐに手を出そうとはしていこない。だがこれはこれで助かった。シルフィードもタバサがシュウを炎の中から救出するだけの時間と、愛梨を避難させるだけの時間の両方を稼げるかもしれない。
タバサはすぐに消火作業にあたって炎の中にシュウの救助にかかる。
「〈ウォーターフォール〉!」
タバサの魔法によって滝のような大量の水が流れ落ちていく。しかしこれだけ大量に注がせても鎮火するまでに時間がかかる。その間愛梨がこの炎に晒されたり、あのナメクジの怪物に襲われる可能性が高い。タバサが上空を見上げて指笛を鳴らそうとした時だった。
「………」
炎の中から、さっきのように人影が見えた。その身長と体格から、シュウだとすぐに分かった。
「シュ…!!」
愛梨がシュウの姿を見て、真っ先に彼の名を呼び出す。だが、愛梨は思わず呼びかけた名前を言うのを止めた。
炎の中から姿を見せたシュウは、ゆらりゆらりと揺れながら、まるで墓からはい出てきた死人のような不気味さがあった。やはりどこか傷や火傷を負わされたのか?だが…目を凝らしてみると、異様なことに気付く。どういうことか傷も火傷もなく、制服さえも燃えカスさえなかったのだ。
「シュウ、怪我…は…………」
恐る恐る話しかけてきた愛梨だが、次の瞬間、彼女は息を詰まらせた。
シュウの瞳から、赤く染まった怪しい輝きが放たれていた。
「ぐ、ぅぅうううううぅぅ……」
回りが炎とその熱に置かされているというの
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