変身-トランス-
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かろうじて遅刻を免れたその日。この学校に通う生徒たちは、この日始業式で二学期の始まろうとしていた。
それから午後、全校生徒と教員らは始業式のために体育館に集められた。
始まるまでの間、夏休み明けという時期もあってか、皆夏休みを惜しむ声が口々に出ている。シュウはあまり口を利かないので、ほとんど憐と尾白のトークが積み重なっている。
「で、瑞生ってばすげーんだよな。見た目によらず運動神経よくってさ、この前遊園地で女の子にちょっかい出してた痴漢を蹴り一発で静めたくらいだし。けどちょっとドジな所がかわいいんだよな」
瑞生とは、憐と交際している野々宮瑞生という女性のことだ。自分たちより少しばかり年上で、憐は何度かシュウたちにもその話を聞かせている。
「お前は自分の彼女の惚気を聞かせて楽しいのか?彼女なしの俺からすればいじめに等しいぞ」
「な〜んだよ尾白。またナンパに失敗したからって僻んでんの?大丈夫大丈夫、そのうち尾白にも春は来るって」
「っぐ…こいつぅ〜…年上の彼女ができたからっていい気になってやがる…!」
尾白は年頃の男子らしく、彼女という存在には強い興味を持つ。逆に自分にはそんなきっかけさえ掴みきれずにいるので、僻まずにいられなかった。そんな風に他愛のない話を、他の生徒たちも暇をもてあまして始業式が始まるまでの間繰り返していた。
「はいはい、僻まない僻まない」
「ぐぅぅ…愛梨ちゃん…」
シュウの隣でも、愛梨が頭を撫でて彼女いないことに苦悩する尾白を慰めている。
やれやれ騒がしいもんだな、と周囲を見渡しながらシュウは溜め息を漏らす。
ふと、彼は人混みの中から、何か光るものを見つけた。凝視すると、綺麗に光る金色の頭髪が目に入った。
(彼女は確か…)
今朝、あの桃髪の騒がしい少女と一緒だった娘だ。列が二年生の場所だから、彼女は一つ下の学年だったらしい。…会ったことがないのに、以前から見たことがあるような気がする。
「こらそこ!静かにしなさい!」
すると、そんな生徒たちに向けて注意を呼びかける声がとどろく。視線を向けると、そこにはクールな視線を生徒たちに向ける女性教員が立っていた。
「うわ、やば…西条先生だ。綺麗なんだけどきっついんだよな…」
尾白は天敵に見つからないように草陰に隠れる小動物のように引っ込んだ。
西条凪。数学の教師で、自他共に厳しい性格。しかし生徒たちへの思いやりを忘れないため、特にその男子以上に頼もしく凛々しい姿から女子からの人気が高い。とはいえ、前述のとおり厳しくもあるので恐れられてもいる。
生徒たちが静かになったところで、始業式の開始時間が訪れた。そこからは退屈なプログラムが進められ、吹奏楽部の演奏の後で、校長からの挨拶が始まる。
「ではオスマン校長。生徒たちへお言葉を」
司会を務める教頭が、校長に全校生
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