アージェント 〜時の凍りし世界〜
第二章 《暁に凍る世界》
不信
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な。」
そう一方的に言い捨てて、暁人は予め裏で準備していた魔法を発動させる。
「《Snow Thaw》」
瞬間、氷の要塞が全て溶け、否、蒸発した。辺りにもうもうと白煙が立ち込め、視界が塞がれる。
『あ、ま、待って!』
そんなフェイトの言葉に耳も貸さず、暁人はスノウスフィアを奪って逃走した。
アースラの会議室は重苦しい雰囲気に支配されていた。白峰暁人を取り逃がしたが、誰もフェイトを責める者はいない。あの時、あの場で、あんな話を聞かされて、一体誰が冷静でいられるというのだろう。
「……あの人が言ってた事、本当なのかな?」
「それは……どの話の事だ?」
フェイトがぽつりと呟いた言葉に、クロノが水を向ける。他の皆も意識を向けていた。
「管理局が、今回の事を仕組んだって。……ううん、それどころか……」
「フェイト、もういい。」
顔面蒼白になって続けようとするフェイトを遮る。クロノも提督という立場になり、管理局がけっして白い一面だけを持っている訳では無いことは知っている。それでも、暁人の話は俄に信じられずにいた。だが、
「確かに、奴の話は衝撃的で、その上嘘を言っている様にも見えなかった。だが、それでも奴は犯罪者だ。それは揺るがない。……話は捕えてからゆっくり聞けばいい。今は、奴を確保する事だけ考えよう。」
クロノの言葉に、皆が迷いを振り切る様に頷く。疑問を先送りにしただけなのだが、性急に答えを出さねばならない訳でもない。クロノの言う通り、暁人を捕まえてからじっくり聞けばいいのだ。
そんな中、一人釈然としない顔をした少女。はやてである。
「どうかしたのか?」
「ん……いや、ちょっと気になってんけど……研究所にあったスノウスフィアって『7個』だった筈やん?」
「ああ、そうだ……いや、まて。奴は確か……『6個』と言ってなかったか?」
「そう……そうなんよ。数が合わへんのや。」
暁人は過去に四度、護送中のスノウスフィアを強奪している。未発掘のスノウスフィアが1つ。そして今日奪われた7つ。すべてあわせて12個のスノウスフィアが存在している。
この内、暁人が所持しているのは11個。つまり、現存しているスノウスフィアは全て暁人の掌中にある計算だ。だが……
「おかしい……数を偽る理由は無いが……なら、残り一つは何処にあるんだ?」
謎が謎を呼び、手掛かりはあまりに少ない。白峰暁人という人間は、未だ吹雪の彼方に隠されていた。
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