三話 貧民街
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あるけど。今、現状の話を聞く限りではなんとも言えない。
なら、これは報酬にしなくてもいいよな。そう判断し、俺は牛肉を戻そうとすると。
「待て、」
三人組の内の一人の男は更に近付き、俺の手に握られた牛肉を睨み。
「よし、その条件で構わない。その話、乗った」
と嫌な笑顔で言ってきた。
「え、いや。ちょっと待て、」
「んだよ?」
「お前らは牛を知らないんだよな?」
「知らねぇよ」
「なら、なんで、知らない生き物の肉でいいんだよ?」
普通、そういうのは不気味で気色悪いって言うのが相場だと思ったんだが。
「んんなの関係ねぇよ。そのウシって生きモンは知んねぇけどよ。それが珍しいことに変わりはねぇだろ」
と男は堂々と言ってきた。
「食うのか?」
「食わねぇよ、そんな得体の知れねぇ肉なんざ」
「じゃぁ……何が、目的なんだ?」
「決まってら、売るんだよ」
そこで、俺はコイツらと初めてあった時の会話の一部を思い出す。
そういえば、コイツら。俺の持ってる物を奪って売ろうとしてたな。
「見たことも食ったこともねぇ肉だ。こりゃあ高く売れるぜ」
おもいっきり転売目的だ。
「転売目的かよ。俺の住んでいた所じゃあ、転売は犯罪だぞ」
「知るか、それはテメェの住んでた所の話だろうが。ここにはそんなルールはねぇよ」
ご最もな返答だ。
ということは最悪、金に困ったら手持ちの食べ物を売ればなんとかなるっえ事だ。よし、これで金銭面はなんとかなりそうだ。
無一文の状態から金を得る術を知れて良かった。
でも、牛肉を犠牲にしていいのか?
家でも滅多に出ない高級な食材だ。それをここで失うのは痛い。それに、この世界に牛が存在しなかった時の事を考えると……余計にツライ。
「うぅ、」
「んだよ。今更、後悔してんのか?」
「へへっ。それなら、止めるか?
別に俺達はいいぜー。こう見えても忙しいし」
「俺達も『暇』じゃねぇしな」
最後のヤツ、暇を強調しやがった。
コイツらには策士の才能があるぜ。
チクショウ。なんで、よりによって牛肉を引いちまったんだよ。
「どうすんだよ。止めるか?」
男達はニシシっと笑っている。
ここは諦めるしかないか。俺は溜め息を付きながら。
「解った。報酬はこの牛肉でいい」
結局、応じることにした。
牛肉の消失は大きいけど、エミリアを探す為だと割り切り、ここは我慢しよう。
願わくば、この世界にも牛がいますように。
俺は半ばか涙目になりながった、そう思った。
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