三話 貧民街
[8/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
した。
だからか、かな。俺は目の前の三人組の行動を見てクスッと笑った。
「テメェ……なに、笑ってんだよ」
「いや、なんでもない。ちょっとした思い出し笑いだと思ってくれ」
気付くと、三人組の男達は俺から距離を取っていた。
これは、あの時と同じで警戒されてるようだ。ジリジリとほんの少しずつ後ろに下がっている。
「そんなに恐がらなくてもいいだろ?」
「は、ハァッ!
誰が、テメェを怖がってんだよ!」
「いや、お前達以外に誰が居るんだよ」
「テメェなんか、ラインハルトに比べればちっとも怖かねぇよ!」
「ラインハルトかぁ。アイツが剣を振るう所は見たことないな。剣聖って呼ばれる位だから無茶苦茶、強いんだろうな」
「なに、当たり前の事、言ってんだ!
ラインハルトは最強の騎士だぞ。テメェみてぇな甘ちゃんとは比較にもなんねぇよ!」
三人の男達は交互に言葉を返してくる。
なんか、ちょっと面白い。
でも、今はエミリアを探さないと。こんな所で道草くってる場合じゃあ……。
「なぁ、お前らってここら辺の道は詳しいか?」
「あっ?」
「俺の知り合いが、ここら辺で迷子になったんだ。その知り合いを探してる最中なんだけど見つからなくて」
「人探し、だと。はっ、俺達の得意分野じゃねぇか」
人は見掛けによらず。三人組は人探しのスペシャリストらしい。
「ホントか!
なら、手伝ってくれないか?」
「アホか。俺達は暇じゃねぇんだ。誰が、得にもなんねぇ事するかよ」
男達はうんうんと頷き、「俺達は忙しいんだ」「暇じゃねんだよ」と似たり寄ったりの言葉を並べてくる。
確かに、何のメリットも無しに助けを求めても断られるのは当然だ。メリット無しで、好き好んで人助けをするお人好しなんて普通はいないだろう。
「じゃあ、手伝ってくれたら報酬をやるよ」
そう言うと男達はピクッと反応した。
「その、報酬っつうのはなんだ?」
どうやら報酬に興味津々のようだ。
「そうだな。今の手持ちで無難なのは……」
肩に掛けていた買い物袋を漁り、適当な物を取り出す。
そして、出てきた物は。
「うっ、牛肉」
ここで引きたくないものを引いてしまった。
今日は特売で安くていい牛肉が買えたんだよなぁ。
男達は、買い物袋から取り出された牛肉を凝視し、近付いてくる。
まずい、このままだとこれが報酬になってしまう。
「そりゃ……なんだ?」
「牛肉だよ」
「牛肉……?
んだ、そりゃ。初めて聞く名前だな」
「え、じゃあ聞くけど。牛は知ってるから?」
「いや、知らねぇ」
どうやら、この世界には牛が存在しないかも知れない。
もしかしたら、リンゴの時と同じで別の名前で広まっている可能性も
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ