三話 貧民街
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物は二つの分かれ道を見ると必然的に左を選択してしまうらしい。なら、ここは左に行くべきか。
いや、待てよ。さっきは左から行ったよな。なら、今度は右に進むのもありかな。
なんともゲーム感覚で進んでいく。
俺はどうやら余り、危機感を感じていないようだ。
冷静と言うより、平常心に近い。
早く、エミリアを探し出さないといけないのに俺は見慣れぬ景色と空気、この異世界を楽しんでいた。
最初は不安しか無かった。
でも、今は楽しいと感じている。
全ての不安を拭えた訳じゃない。
この世界は俺の居た世界とは全くの別物だ。知らないことばかりで、見るもの全て目新しい。だからかな。歩いているだけで楽しいんだ。
歩いて、景色を見て、触れて、空気を吸って吐く。こんな当たり前の事を楽しいと感じたのはいつぶりだろう?
聖杯戦争の時も、これと似た感覚を味わった。
どんな願いも叶えられる究極の願望機『聖杯』を巡って戦う七人のマスターと七柱のサーヴァント。
俺は、その聖杯戦争に巻き込まれ、サーヴァント『セイバー』のマスターになった。あの時の俺も訳の解らない事ばかりで混乱してたっけ。
今の俺は、あの時の俺と似てる。
訳も分からず、異世界に飛ばされ、目的もなく、今を生きている。あの時の俺と違う所は目的を持って行動していた所だろう。あの時の俺は聖杯戦争を止める為に聖杯戦争に参加した。
今の俺は、流れに身を任せ。
風の赴くままに歩いている。
自由気ままに。誰かに命令されることも無く、自分の意思で。
「ははっ。俺って、そんなお気楽な奴だったかな」
自分の自由奔放さに呆れて笑ってしまう。
いかんいかん。今はエミリアに探し出さないと。
新たな分かれ道。今度は左へ進もうとした。
その時だった。
「アッ!?」
右の分かれ道から三人組の男達がやってきた。
男達は俺を見て、変な声を出しながら身構えた。
「あぁ、お前達は」
異世界に飛ばされてすぐに会った三人組だ。
「て、テメェ!
なんで、こんな所にいんだよ!」
「いや、人探しで」
「人探しだぁ?テメェ、こんな所で誰を探してるっつうんだよ」
「それをお前達に言って、俺に得はあるのか?」
「んなの知るか!
取り敢えず言えばいんだよ!」
「いや、なんでさ」
元気な奴らだ。
この貧民街を歩いて見て回って、解ったけど、この貧民街の人達は別に貧しいことを苦しいとは感じていないようだ。
貧富の差は存在する。
貧しい者は裕福な者を羨ましがるだろう。だが、だからといって裕福な者を妬んでいるとは限らない。
ここの人達はまさにそれだ。
初めて、この貧民街を目にした時は貧富の差に目が眩みそうになった。でも、それは俺の勘違いで、安堵
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