三話 貧民街
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────ガンッ。
剣撃、一閃。
────ガンッ。
滑らかな鉄の音。
────ガンッ。
弾き合う、鉄の刃。
────ガンッ。
────ガンッ!
────ガンッ……!
剣聖 ラインハルト・ヴァン・アストレアは剣を振るう。
「────」
その一撃は必殺。静かな動作で、最小限の動きで、敵の剣を躱し。それを弾き返した。
「化け、物め!」
男は悲鳴を上げていた。
ラインハルトの剣撃を必死に耐えながら「クソっ!クッソォ!」と涙目になりながら男は剣を振るう。
その姿は見るに耐えない。
だが、なかなかの手練だとラインハルトは思った。
剣聖であるラインハルトの一撃を(と言っても物凄く、物凄く、物凄く、加減をしているが)男は弾き返している。普通の人間には不可能だ。
それを目の前の薄汚い男はやってのけている。
「────」
静かな動作で、剣を振るうラインハルト。
「クソ野郎ッ!」
荒々しい動作で、剣を振るう男。
互いの剣は打ち合う度に火花を散らし、互いの剣は打ち合う度に変形していく。
ラインハルトの一撃に剣が耐えきれていない。
そして、それを受け止め、弾き返している男の剣もそれは同様だ。
「……ハァ……ハァ…」
消耗しきった剣と男。
勝負あり、ラインハルトはそう判断し、憲兵に借りた剣を収める。
「勝負ありです」
元から勝敗は決まっていた。
それは薄汚れた男も解っていただろう。だが、それでも男は剣聖に挑んだ。
何故?簡単な答えだ。
男は剣聖 ラインハルト・ヴァン・アストレアと剣を交えたかった。ただ、それだけだ。
圧倒的、実力差は解っていた。負けることは解っていた。
それでも、剣の道を歩んだ者なら一度は想うはずだ。
剣聖と闘ってみたいと。
そして、男は敗れた。
納得のいく敗北だ。
実際に剣を交えて解った。剣聖は化け物だと。勝てる見込みなんて有りはしなかった。剣聖が、少し力を入れれば男の命は消えていたことも。だが、だからといって諦めたくない。負けると解っていても挑みたい。例え、どれだけの実力差だろうと挑まなければ勝利することは出来ないのだ。なら、負けると解っても剣を振るのは至極当然と言えよう。
男はその場に倒れ込んだ。
力を使い切った。
「剣聖……その名の通り、アンタは剣に愛された騎士のよう……だな」
「僕には、これしか有りませんから。それ以外のことはできません」
「抜かせ。テメェは自分を過小評価し過ぎなんだよ」
「いえ、これは正当な評価ですよ。それに、僕から剣をとったら何も残らない」
「あるじゃあねぇか。その面とその躰がよぉ」
「…………」
そう言われ
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