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終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?赤き英雄
この世界が終わる前に
この世界が終わる前にA

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「待て聞き捨てならん。衛士はありがたいが、テッドは許さん叩き出せ」
「なにいきなり真顔になってるのよ。そんなに仲悪かったっけ?」
そういうわけではない。ただ、仮にもおとーさんと呼ばれる立場の者として、こういう時には激昂《けきこう》する権利と義務があると思うのだ。
「はい、できた。お皿は自分で準備して」
宣言し娘はエプロンを外す。
鍋をまるごと、テーブルの上へと運んでくる。
「待ってました。いやもう、ここに来る前から腹減って腹が減って」
「こんな時間だし、余りものをあっためただけだけど」
つん、と澄ました顔で娘は言うが、これはただの照れ隠しだろう。この養育院は、鍋いっぱいのシチューが余りものになるほど裕福ではない。
しかしまあ、そこには気づかないふりをすることにして、
「ありがとうな」
そのひとことだけを、言っておいた。
「お礼言われるようなことでもない」
テーブルの向かいに座ると、これ見よがしに、頬杖《ほおづく》をつく。
実際のところ。
仮に自分にいま恋人のようなものがいたとしても、おそらくこの夜は、この養育院で過ごしていただろう。そう、青年は思う。五年前。まだ小さかった自分が剣を握《にぎ》ろうと決めたのは、ここを守るためだ。
五年前。大した才能もなかった自分が剣を振るい続けていられたのは、こつかこの場所に帰ってくるためだ。
明日、自分たちは、地上すべての人類の大敵であるという 星神《ヴィジトルス》に挑む。こう言うと実に御大層《ごたいそう》な大冒険《だいぼうけん》ではあるが、やることはこれまでと何も変わらない。
守りたいもののため。
帰りたい場所のため。
自分はいつものように剣を振るい、そして生き残るのだ。

「それにしてもさ。こんな時くらいさ、ちょっとくらい気のきいたこと言えないのかな、このおとーさんは」
頬杖のまま、娘がなんやらぶつくさと文句を言っている。
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