溝-グレイヴ-
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のかい?」
「…回りくどいな。はっきり言ったらどうなんだ?俺に『行くな』と言いたいんだろ?言っておくが行くなと言われても行くぞ」
シュウは少し煩わしく思いながらも、ムサシにそのように問い返す。
「…わかった。じゃあ、こうしよう」
意地でも梃子でも折れようとしない。ここまでの姿勢を見せた人物は、ムサシの記憶の中でもほとんどいなかった。ならばと…ムサシはアンリエッタにあることを申し出た。
「女王様、偵察任務には黒崎君も連れて行きましょう。その際、僕とサイト君たちに彼の監視をお願いします」
「何…?」
シュウはそれを聞き、女王に申請するムサシを細目で睨んだ。
自分のせいでアスカが捕まってしまった。
ティファニアたちも、アルビオンを脱出しなければならないことになった。
自分の周りでは、あらゆる形で必ず不幸が降りかかる。
だから自分の力のみで、誰の助けも借りずに助けに行くつもりだった。だが、それは許されなかった。今後の方針を決めるあの会談の後、あのムサシという男が、常にシュウが一人でアルビオンへ向かわないように、シュウとは向かい側の部屋に自分も構えて監視し続けている。さらには、リシュがムサシに言われてシュウと同じ部屋で寝かされている。少しでも彼が一人で学院を出ようとする素振りを見せたらすぐに知らせるように言われている。サイトたちも彼が逃げないように、見ていないところで目を光らせているそうだ。事情が事情なので、テファやマチルダは別室だ。
アスカを捕えている連中よりも、行きたくても行くことのできないこのもどかしさと悪戦苦闘する羽目になった。万が一強引に変身しても、即座にサイトが自分を捕まえに来ることになっている。
「完全に囚人扱いだな、旦那」
「……」
テファが介抱してくれていたこの部屋も、監視のために与えられたものとなったとたんに無機質な牢のように思えてきた。まぁ、こんな俺にはお似合いかもな…と心の中で呟いた。
「なんか返してくだせぇよ。俺だけじゃただの独り言ですぜ。久しぶりにあんたと一緒に暴れられると思ってうずうずしてたんっすよ」
机の上から、インテリジェンスナイフの地下水がうるさく言ってくる。一時マチルダが預かっていたのだが、退屈だからとギャーギャー喚いた結果、シュウのもとに突っ返されたのだ。かつては、己を握った人間の肉体を一時的に乗っ取る能力を用いてガリア王国の北花壇騎士という汚れ役の仕事を引き受けていたのだが、それらの仕事やシェフィールドに思いのままに使われることがよほど嫌だったらしい。かつトラブルに何度も巻き込まれ続けるシュウの方が、一緒にいて飽きないという。
「…一人じゃなくて一本だろ」
「おっと、こりゃ一本取られたぜ、ナイフなだけに」
「…処分するか」
ウザいギャグをかましてきたので黙らせようと思ったシュウ
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