暁 〜小説投稿サイト〜
ウルトラマンゼロ 〜絆と零の使い魔〜
溝-グレイヴ-
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明らかに無茶をまたやらかす気満々のシュウに、テファは離れ離れとまったく変わらない彼に苛立ちさえも感じ始めた。
「いい加減にしときな」
それに同調するかのように、シュウが開けようとした扉から、マチルダが新たに入ってきた。傍らにはリシュもくっついてきている。
「マチルダ、さん…あんたまでいたのか」
シュウの言い方にマチルダは眉を潜める。
「いたのか、とはずいぶんだね。あたしはあんたにいろいろ文句を言ってやりたくなっていたというのにね」
「文句、だと…?」
「まさか何も自覚がないなんてことないよね?あんたテファにずいぶんと冷たいこと言ってくれたじゃないか」
そのときのマチルダは、町で出くわしていきなり因縁をつけてきたチンピラのように、シュウのすぐ目の前で彼を睨み付けた。しかしそのうちに宿した怒りは、その比ではない。
「これまであんたのおかげで、あたしやテファ、村の子達は命を救われた。確かに、あたしたちはあんたから見れば足を引っ張る存在でしかないだろうさ。
でもね、何があんたをそこまでさせるかは知らないけど、ものには限度があるんだよ」
「…限度がきたから、俺にもう戦うなとでも言うのか?」
「ああ、あんたの無茶がどれだけこの子を苦しめたと思ってるんだい?」
テファを指差しながら、マチルダはシュウに言う。
シュウに対しての不満を抱いていたテファも、普通なら姉の鋭い言葉に対して、何かしらシュウを擁護する言葉を言うはずだったが、言い返さなかった。
「お兄ちゃん、リシュたちを置いてどこかに行っちゃうの?」
切なげな視線を、リシュは送っていた。見るからに離れたくない、言ってほしくないと訴えている。
対するシュウは無言だった。テファに対する冷たい言動、そして自分の無茶な戦いを目の当たりにしたことで彼女が苦しんだことについて、自覚がないわけではない。彼女の性格を考えれば、自分が傷つく姿を見るたびに彼女自身も心を痛めることなど想像し易い。それに、ただ傷つく以外にも、彼女を不安にさせていた原因はあることも認知している。ムカデンダーや、ロサイスでのメフィストとの戦いで、自分は怒りに我を忘れて暴走していた。そのときに、自分の中にある『どす黒い何か』が大きくなっていたことも、あの暴走という形で反映されているだろう。
だが…。
「俺は……」
脳裏にどうしても、今の彼を形成した要因である過去の光景が浮かぶ。
戦場で、自分がビーストから人を守るために開発した武器で、守るはずだった人々が死んでいく。果ては、守ると誓ったはずの少女が命を散らす、あの光景が、どうしても頭から離れずにいる。…いや、忘れるなんて、そんなことが許されるとは思えない。それだけの罪を犯したのだから。
「なんだい?守ってやってるんだからつべこべ言うな、とでも言いたいのかい?」
「…別に」
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