溝-グレイヴ-
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も、彼には考えを改めてもらわないと」
でなければ、シュウの一件でティファニアは心に消えない影を背負うことになる。ムサシはそう読んだ。
「ティファニアちゃん、まだ彼を助けたい?」
「……はい。でも……」
無理やり召喚し故郷である地球から引き離すことになっても、彼は自分たちを恨むことはなかった。それどころか必死になって自分たちを守ってくれていた。じゃれついてくる子供たちに対しても、子供は苦手だなんていいながらもなんだかんだで付き合いの良さを見せてくれていたし、ティファニアの口ずさむ歌と演奏を素直に褒め称えた。ハーフエルフであることに対しても、何一つ恐れなど感じることなく普通に接してくれた。
何より、生きるべきだと言ってくれた。エルフがいない世界から来たからなのか…いやいない世界から来たこそ恐れてもおかしくない、会って間もなかった自分に、優しい言葉をくれた。
そのこともあり、たとえ怒りで暴走する様を見せていても、見る見るうちに落ちようとしている姿を見ていて、何とかしなければと思った。助けたいと思った。ムカデンダーが村を襲った時、魔法を使って怪獣から記憶を奪い、自分なりに混乱を誘おうとしたこともあった。愛梨のことを初めて知ったあの時、彼が精神面でまずいと思った時は自分の言葉で引き留めようとも図った。
でも、自分は彼のために結果を残したことはなかった。
やはり、自分は…あの時彼が言っていた通りなのか?結局『ただの足手まとい』でしかないというのか。アンリエッタが今回自分たちにも伝えた、アルビオン大陸への偵察、潜入作戦。それにシュウも、ウルトラマンであることを知られたうえで選ばれた一方で、自分は同じ虚無の担い手でもあるルイズと違って、作戦メンバーにもくわえられなかった。
テファは自分の無力さを呪う。結局、ただ見ている事しかできない、弱い自分が…歯がゆかった。…いや、違う。
怖いのだ。また彼から拒絶されることが。そして…
彼の狂っていく様を見るのが…。
――――私じゃ、シュウの支えにはなれないの…?
――――愛梨さんのようには、なれないというの…?
そんな心の呟きも彼には届かない。
今の自分では、シュウを支えられない。いや…何をしても彼に対して何かができるという確証も自信もなかった。
「いいかい。どんな結果が待っているとしても、最後まで決して諦めたらいけない。今の彼には傍で支えとなる人が必要だ。君のような人が、ね?」
ムサシは、元気のない彼女に向けて、太陽のような笑顔を見せて元気づけようとする。
話に聞くと、彼女は森の中で平和に暮らしていただけの女の子。悪意ある者の手にかかったり、運命に翻弄されて辛い目にあっていいはずがない。それなのに
「とにかく、次の作戦では僕がサイト君たちと共に彼を見てくる。もし彼が危険な状態に陥っ
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