溝-グレイヴ-
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「そういえば、アスカさんは?」
「…アスカは、いない。俺のせいで…捕まった」
「え!?」
テファはそれを聞いて目を見開いた。
彼女が炎の空賊たちと共にアルビオンを脱出した直後、メンヌヴィルに捕えられた自分をアスカが救出してくれた。しかし脱出する直前のタイミングで奴の妨害が入り、自分が当然のようにメフィストと戦おうとしたところで、アスカが強引に自分を脱出させ、彼はただ一人メフィストに立ち向かっていった。脱出の際にダイナとなったアスカの作り出した空間の歪みの中へ投げ入れられ、気が付いたときには魔法学院にいて、アスカが捕まったかどうかは学院を襲撃したメンヌヴィルから聞いた…そこまで話したところで、テファの表情が曇った。
「アスカさん…」
そんな彼女の顔を見て、シュウは自分に対する怒りを募らせた。
(なんで…俺はいつもこうなんだ…!!)
自分に手を差し伸べてくれた人たちが、次から次へと自分のせいで傷ついていく…もうたくさんだと思ったのに、未だにしつこく発生しは自分の心に傷を負わせていく。なぜ、こんなことばかりが起こるのだ?
…いや、考えても無駄だ。そんなことよりも大事なことがある。アスカが、自分やテファを狙ってきた奴らに捕まってしまったのだ。自分も実験されたことは感覚的に覚えている。彼も同じ目に…いや、それ以上に最悪の事態になりかねないことをされている可能性が高い。
すぐにシュウは自分の装備を確認する。エボルトラスターやパルスブレイガー…すべてそろっている。コルベールやアスカが、いつぞや無理をするべきじゃないとは言っていたが、そんな悠長なことを言っている場合じゃない。
すべての装備品はそろっている。シュウはすぐにドアのほうへと歩き出す。それを見て反射的に、テファが引き止めてきた。
「待って!どこに行くつもり!?」
「時間がない。すぐに助けに行かないといけない」
「助けに行くって、今からアスカさんを!?」
突然すぎるシュウの決断にテファは目を見開いた。
「だめよ!まだあなた、起き上がったばかりじゃない!」
先日、闇の巨人と激しい激闘を繰り広げていた。わずか1日の休息では、きっと体調も万全じゃないはずだ。というのに、そんな状態で戦いに向かうなんて無謀すぎる。世間をまだ疎い状態のテファでもそんなことはすぐにわかった。
「こうしている間にもアスカが何をされているのかわかったもんじゃない。今すぐにでも助けに行かないと、アスカの命の危険が高まる」
しかしシュウは引く気を見せなかった。助けに行ける方法があるのだ。それに、本来ならもっと早くそうするはずだった。コルベールが自分へおせっかいとも思える気遣いを見せたことでだいぶ遅れたが、これ以上遅れてしまえば、アスカに最悪の事態が訪れかねない。シュウはそう考えていた。
「シュウ、あなたは…!」
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