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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十九話 波紋
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は堅密な関係を維持して行きたいと」
フェルナー中佐からの伝言、つまりブラウンシュバイク公からのメッセージか……。悪くない、少なくともここで関係が途切れるよりはずっとましだ。
「了解した、フェルナー中佐にそう伝えてくれ」

「それと、今回のテロの犯人が分かりました。犯人はクロプシュトック侯です」
クロプシュトック侯? 聞き覚えの無い名前だ、しかも犯人は貴族? 不審に思いケスラーとクレメンツに視線を向けた。クレメンツは俺と同じように困惑している。しかしケスラーは顔を強張らせていた。どうやら心当たりが有るらしい……。



宇宙暦 795年 8月 3日  第一特設艦隊旗艦 ハトホル    エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



宇宙艦隊司令部から連絡が入ってきた。艦橋に居る人間は殆どが迷惑そうな顔をしている。無理もないだろう、第一特設艦隊は第一、第三艦隊に見つからないように行動しているのだ。そんなときに長距離通信などどう見ても有難い事ではない。

おそらく宇宙艦隊司令部の参謀が通常業務の連絡でも入れてきたと思っているのだろう。内心では俺達は忙しいんだ、暇人の相手などしていられるかと毒づいているに違いない。まあ、俺自身は三割ぐらいはシトレからの連絡かなと思っている。その場合は帝国で何か起きたか、イゼルローン方面でラインハルトが攻めてきたかだろう。

現実には作戦行動中に上級司令部からの通信が有る事は珍しい事じゃない、頻繁とは言わないがしばしばある事だ。上級司令部が下級司令部の都合を考えることなど無いだろう。訓練の一環だと思えば良いのだが第一特設艦隊は既に二回も第一艦隊の奇襲を受けている。これがきっかけで三度目の奇襲になったらと皆考えているのだ。

訓練なんだからともう少し割り切れれば良いんだが、艦隊の錬度が余りに低いのでそこまで余裕が持てないでいる。それでも少しずつだが良くはなってきているし、成果が上がっているのも確かだ。余裕が出るのはもう少し時間がかかるだろう。

平然としているのは俺とサアヤ、嬉しそうにしているのはシェーンコップだ。こいつの性格の悪さは原作で良く分かっている。可愛げなんてものは欠片も持っていない男だ。何でこいつが俺みたいな真面目人間に近づくのかさっぱり分からん。

スクリーンに人が映った、シトレだ。宇宙艦隊司令長官自らの連絡か、どうやら何か起きたらしい。席を立ち敬礼すると皆がそれに続いた。
『訓練中に済まない、さぞかし迷惑だったろう。少し長くなるかもしれん、座ってくれ』

低い声には幾分笑いの成分が含まれている。参謀長達の考えなど御見通し、そんなところだろう。皆バツが悪そうな表情をしているが遠慮しなくていいんだ、迷惑なのは事実なんだからな。皆の代わりに俺が言ってやろう。

「お気になさらないで
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