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霊群の杜
輪入道 後編
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留めず、俺のパーソナルスペースにズカズカ入り込んでくる。傍らで阿呆のように口を開けて成りゆきを見守っている奉に、激しく目配せをする。…おい、お前が変なのに関わった結果がこれだ。助けろ早急に。
「―――良かったな変態センセイ。二人の邪魔をするのも野暮だしねぇ。俺、先帰るわ」
奉てめぇ!!!
「君も友達だよ、玉群くん」
席を立ちかけた奉の肩を正面から半ば強引に掴み、医師は笑顔で椅子に押し下げた。…奉も素直に座る。お前もお前で、どこまで力の勝負に弱いのだ。
「君も『変態センセイ』と呼んでくれたでしょう。それに僕に、青いニット帽をプレゼントしてくれた。そうだね、親友」
駄目押しのように、奉の肩をぐっと椅子の背もたれに押し付けるようにしてから、奴はニコリと笑った。…またしてもざわつく学食、突き刺さる視線。囁き交わす言葉の中に『変態』という単語が混ざり始めた時点で、俺は平穏なキャンパスライフを諦めた。


―――所詮俺の周りには、やばい連中しか集まって来ないのだ。


後日。
『変態を傍で監視して周囲の人間に危害を及ぼさないためだ。我慢しろ』と奉に説き伏せられ、結局LINE交換に応じることになった。偶々その場にいただけの静流さんも、巻き添えで交換させられた。女の子なのに60人以上を殺害したサイコパスに連絡先を掴まれるとか、この人どこまで運がないんだろう。もう気の毒通り越してちょっと面白い。

でだ。
何故か俺と奉と静流さんがグループLINEに招待された。
「……グループ名『変態センセイ』だとよ」
「……これ拒否しちゃダメ?」
「……我慢しろ、仕方ないだろ」
そう云う奉の瞳の中心に赤い光がちらつき始めた。…危害を加えられたとみなしているらしい。
基本的には変態センセイの糞トークが昼夜を問わず流れてきて俺と奉が既読無視する、という鬱グループなのだが、今日、括目のとんでもねぇ地雷トークが流れて来た。


『お茶会開催予告!みんな、僕の地下室へおいでよ!美味しいスコーンも用意するよ』


「地下室って…あの地下室か?」
胎児を失った母親の死体が円筒型の水槽にぷかぷか浮かぶ地下室で、妙に明るい蛍光灯に照らされながら、紅茶やらスコーンやら振る舞われる…そんな飛び起きる系の悪夢みたいなお茶会を想像して気が遠くなる。
「まず男が3人も雁首揃えて『お茶会』って発想からしてもう、如何にも友達いない奴だねぇ」
「あそこで酒盛りのほうが、より業が深そうな感じになるだろう…うっかり泥酔したらどうなっちゃうんだよ」
「ホルマリン漬けが3体増えるんじゃないかねぇ」


というわけで俺たちの命の危機が再び訪れつつあるんだが、LINE交換で、あいつの苗字が『薬袋』であることが判明した。

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