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霊群の杜
輪入道 後編
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達の友達の友達辺りまで回ってんだよこのヘタレが」
「すみません…」
「もうよせよ奉」
俺もどうなのか、とは思うが。
「結貴もだぞ。ヘタレ眼鏡のノート死守はお前の2学期の最優先事項だろうが」
「もっと優先な事項ないか!?」
「すみません…」
「…大丈夫だから。あと、たりない科目ある?」
静流さんはもじもじしながら、あとは何とかなります…と小さく答えた。相変わらずあまり目を合わせてくれないけど、今日は少しだけ上目遣いにこっちをみて、笑ってくれた。
「よかった。…そっちの学科の友達もいるから、足りないのがあったら遠慮なく云ってね」
のぼせ上がりかけていた俺の表情が、かちりと固まった。


俺たちの正面の席で、にこやかに手を振る『彼』を見た瞬間に。


―――何故、こいつがこんなとこにいるんだ。
『安定の不味さ』だというB定食をつついていた奉が、片手を上げて応じた。
「おぅ、変態センセイ。生きてるか」
「おかげさまで。そっちの席、いいかな?」
「厭だ」
「ははははは」
奴は人の話をろくに聞かず、強引に奉の隣に腰かけた。その人の良さそうな笑顔を崩さないまま。俺も、多分奉も、怒りや嫌悪を通り越して『困惑』していた。…こいつの間合いが全く分からない。何というか…全般的に、近いのだ。こちらの都合は全く斟酌していない、というか歯牙にもかけていない近さだ。
「何で変態センセイが教育機関に出入りしているんだ。…おい結貴、警察呼んどけ」
………俺に振るな。もう絶対に関わり合いにならないと決めたのだ俺は。
「ははは、関係者だからに決まってるじゃないですか」
「ほぅ、OBか?…おい結貴、退学届け取って来い。変態が感染る」
「あはあはあは、おかしいなぁ玉群君は。僕を誰だと思っているんですか。こんなど田舎の二流大学で何を学べと。医学は日進月歩なのですよ。仮にも総合病院を継ぐならば東京の医大は必須でしょ?」
………ど田舎の二流大学生で悪かったな。
「ならば猶更怪しいねぇ。OBでないなら何しに来た?」
「法医学の講義ですよ。僕、一応講師もやってるんです」
まじか。
「週に一コマだけど、割と人気でねぇ。僕の授業は教室じゃなくて大講堂なんですよ…どうです?君達なら選択すれば顔パスで単位あげちゃいます」
―――ぐぬぬ。
「小梅ちゃんは、元気かな?」
軽く指先を組んで顎を乗せ、医師はくすりと笑う。
「玉群君…の方ではないね、『あの時の小梅ちゃん』は」
奴はしきりに、俺の方を見る。俺は絶対に目を合わさないと決めて、12月限定のけんちん饂飩をすすり続けた。折角売り切れ前にゲットできたというのに、味がしない。……何なのこの状況。こいつ、小梅殺そうとした自覚あんの。
「…つれないねぇ、青島君」
つれないねぇ、だと。通報されないだけで
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