輪入道 後編
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小梅ね、奉くんと結婚してあげるー!…貴様、赦さんからな…」
歯の間から絞り出すような低い声で奉が呟いた。
「それ俺のせい!?その瞬間俺がどんな目に遭ってたか知ってる!?」
「あの時はちょっと、奉様の瞳が赤みを帯びかけて…あら、結貴さんが呪われるわ、って…」
「危害を加えられたとみなしたの!?」
ああぁぁ…夜中の2時に叩き起こされてからずっと酷い目に遭い続けているというのに今度は呪われるのかよ。
「それらをも凌ぐ一番のハイライトは、やっぱり…アレでしょうか…突如パンツを下げながら」
「なにもうその時点で最悪の事態だし、続きを聞きたくないんだけど!?なかったことに出来ない!?」
「えー!?みてみて!?小梅、ちんちんがはえたよ!?ちんちんだよ!?ねえ奉くん見て!?ほらちんちん!!ちんちんだねぇ!!……あの時はもう…こいつもう死んだ方がいいんじゃないか、と……」
ぽぅ…と奉の瞳の中心に赤い光が点った。
「なんで呪うの!?今回の件で一番理不尽に危害を加えられてんの俺だからな!?」
今度こそ、温かい茶と軽い朝食を振る舞われながら二人がかりで身に覚えのない俺の『蛮行』を語られ続ける早朝。
あの変態センセイを陥れるつもりが、俺こそ人生最悪の一日がスタートしていた。人を呪わば穴二つ、というやつか。
先程、姉貴から小梅を無事保護したとの連絡を受けた。『親切なお医者さん』が、小梅と遊んでくれていたみたいで、小梅はちっとも怖い思いはしていなかったのよ、と、心底ほっとした声で告げられた。
小梅と遊んでいたのは奉ではなく、変態センセイということになったらしい。
つくづく、怖ろしいほどに運のいい男だ。
「どうかねぇ…運がいいとは云えないかもしれないよ」
食後の汁粉をすすりながら、奉がぽつりと云った。
「そうか?重大犯罪を誤魔化しおおせたのに」
「さっき結貴が云った通りだよ。…地霊を使役だ?とんでもねぇよ。そんなこと俺だって出来やしない。使役出来てると思ってんのは、そいつの思い上がりだねぇ」
「それは…そうだな。結局、大事な標本は台無しにされたし」
「標本というか…子供だねぇ。輪入道も、そのつもりで奪っているよ」
「それでも一般人に混じって生き永らえるなんて運がいいだろうよ。津山33人殺しのざっくり2倍だぞ胎児込みだと」
「長生きは出来んよ、あれは」
「どうかね、悪い奴程よく眠るっていうじゃんよ」
「や、そういうことじゃない」
ありゃ、輪入道に目をつけられたねぇ…そう云って奉は空になった湯呑を置いた。
「実際のところ、輪入道がどういう妖なのか、俺にもよく分からねぇんだよ。だがねぇ…」
そう前置きして、奉は語り始めた。
輪入道を退ける札というのが存在する。
≪此所 勝母の里≫と書かれた札を戸口に貼ると、輪入道はそれを嫌っ
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