第一章 天下統一編
第十九話 同士
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っていました。ですが、伊豆は既に徳川家康の調略が入り私になびく国衆がおりませんでした」
「朱印状があればそれをひっくり返すことができると考えたか? 甘いな。その程度でひっくり返すことができるものか。国衆が動かなかった理由はお前を信用できなかったからだ。東海道を抑える徳川家康とお前の言葉では比べるまでもない」
福島正則は言葉を選ばず直球で俺を説教してきた。ここで俺に気を遣っても意味がないからな。俺を説得しようとするなら現実を理解させるしかない。
「そんなことは分かっています」
「分かっているだと?」
福島正則は俺の物言いが気に入らなかったのか眉を釣り上げた。彼は俺が意固地になって口答えしていると思っているようだ。
「はい。私は朱印状を使い国衆を抱き込むつもりはあります。ですが、それは結果論です。相手が私を軽輩と侮るなら、私を頼らざる得ない状況に国衆を追い込めばいいのです。人は追い込まれれば藁をも掴むと申します」
俺は意味深で冷酷な笑みを浮かべた。俺の雰囲気の変化に薄気味悪さを感じたのか福島正則と蜂須賀家政は押し黙った。
「追い込むと出たか。何をした」
福島正則は俺を凝視していたが徐に口を開いた。俺は二人に全てを話すことにした。徳川家と北条家の放った間者達を韮山に近づけないように皆殺しにしていることを語った当たりから表情は強張っていた。
「福島様、韮山には徳川家と北条家の間者は近づけません。韮山城主、北条氏規、と徳川家康は江川氏を介して通じています。互いの情報が断絶した彼らは今どのような心境でしょうか? 北条氏規には対面した時に心に毒は蒔いております。主の不安は兵達で伝染するものです。ここで大手門を落とせば朱印状を持つ私に江川はどう動くでしょうか? 徳川家康を信じて主に殉じるでしょうか?」
俺を見る蜂須賀家政の目に恐怖の感情が交ざっていることに気づいた。俺のやり口は恐ろしいのだろうか。それとも俺が考えた計画が子供らしからぬ内容であることに恐れを抱いてるのだろうか。
「大手門を落とせる確証はあるまい」
俺は藤林正保に視線を向け合図した。藤林正保は俺に頷くと二人の前に進み出て韮山城の縄張り図が描かれた紙を開いた。福島正則と蜂須賀家政は縄張り図に視線を落とし凝視するがしばらくすると食い入るように見ていた。
「これを何処で手に入れた?」
「調略を行っていた風魔衆が手見上げに人質と一緒に持ってきました」
「風魔衆だと!? 北条家お抱えの忍びではないか! そんな輩が持ってきたものを信用できるというのか?」
蜂須賀家政は不信感に満ちた目で縄張り図に視線を落とした。
「偽物の縄張り図を私に持ってきても意味がないでしょう。福島様が仰られたではございませんか? 私では信用されな
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