第一章 天下統一編
第十九話 同士
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俺はふと歩くことを止め空を眺めた。
暗闇の中に星が美しく映える。この時代の空は綺麗だな。この光景を見ていると俺が今立つ場所は戦場じゃないように思えてくる。
何時か戦争とか血生臭い話抜きでのんびりと夜空を眺める時が訪れるのだろうか?
「殿」
俺は呆然と夜空を眺めていると柳生宗章が声をかけてきた。
「星が綺麗だなと思ってな」
「呑気なものだな」
「良いでは無いか。確かに星が綺麗だな。最近はこうして夜空を見る機会も無かったからな」
俺が夜空を見た感想を口にしていると福島正則が呆れ気味に言った。蜂須賀家政は俺を擁護すると空を眺め感慨に耽っていた。
「急ぎましょうか」
俺は福島正則と蜂須賀家政に声をかけ、俺の陣所へ向けて再び歩きはじめた。
秀吉も粋な計らいをしてくれた。韮山城攻めの豊臣軍への使者に石田三成を立てたことだ。お陰で単独での城攻めを行う許可の言質を武将達の見せることができた。同時に俺を追い込むことにもなったが。
でも、石田三成は自分から俺に韮山城攻めのことを振ってこなかった。あれは秀吉の最終確認だったのだろうか。あの場で俺が黙っていれば秀吉は約束のことを有耶無耶にしようとしたかもしれない。今になっては真実は分からない。これが終わったら石田三成に聞いてみてもいいかもしれない。
俺は歩きながら自らの掌を見つめた。
秀吉から朱印状を受けたんだ。失敗は許されない。
小国とはいえ一国の知行を安堵する朱印状を秀吉は発給した。いくら身内とはいえ、朱印状を安易に発給できるはずがない。だが、秀吉は俺の願いに応え朱印状を発給した。
秀吉は俺が韮山城攻めに失敗すれば約束通り切腹を命令するだろう。寧々叔母さんが俺の命乞いをしても許すさないはず。それだけ朱印状という存在は重いと考えている。
あの時の秀吉の表情は恐ろしかった。本当に失敗したら殺されると思った。
秀吉も立場があるだろうしな。
失敗した俺を許せば秀吉は武家の棟梁として体面を失う。だが、秀吉のやり口は要求した俺が言うのもなんだが厳しすぎると思う。
秀吉が厳しかろうと約束を守ればいい。俺が韮山城を落とせば切腹する必要は無くなる。再び俺は自らの右掌を見た。掌を見ると指が小刻みに震えていた。
俺は雑念を払うように顔を左右に振り、自らの頬を両手で叩いた。俺の手を見ると震えが収まっていた。
「俺が不安になってどうする」
俺は自分に言い聞かせるように自分だけに聞こえるに小さな声で呟いた。大将が不安になれば家臣達にも不安が伝染する。俺は自信に満ちた態度で家臣達を引っ張らなければならない。俺は前方を睨み付け拳を強く握りしめた。
「殿、ご苦労様で御座いました」
柳生宗矩が俺を出迎えた。彼は俺の後ろにいる客の姿
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