ターン75 鉄砲水と英雄、空爆
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それだけでいい。下手に気負ったって空回りするだけなのは、この数年で身に染みた。本当に生きてんだか死んでんだかもよくわかんないような化物には、そんな程度で十分だ。
そんなことを考えていると、突然道が開けた。長かった森を抜けたらしく、その先に十代の後ろ姿が見えた。声を掛けようとするも、その向こうにさらに2つの人影がいるのに気づいた。1人は老人で、なんか見た覚えはあるんだけど誰だったか思い出せない。でも、もう1人はよく知った顔だった。
「斎王……?」
この時点でさっと身を隠し、耳を澄まして木陰にまぎれてじりじりとにじり寄る。なぜ斎王がこの島にまた来たのか、なぜ十代がそこにいるのか。なんだかわからないけれど、なんだか面白そうなことやってんじゃないの。やがて少しずつ、会話の内容が耳に入ってきた。どうやら斎王たちが十代に何かを伝えに来たものの、肝心の十代がどうもつれない態度らしい。
「……我々に啓示が下ったということは、君も気づいているのだろう。だからこそ、君はその原因が自分にあると感じ、1人でこの島を出ようとした。違うかね?」
「さあな」
「鮫島校長から聞いたが、ついさっき退学届けを出してきたそうじゃないか。だが十代、もはや話はそんな単純な次元ではないのだよ。調査チームの調べによれば、この島に何らかのエネルギーが噴出しようとしていることを突き止めた。あくまで仮説だが、こちら影丸会長の三幻魔、私の光の波動、そして君のユベル……これらの事件が複合的にこの次元へと負担をかけ、その結果その中心であったこの島に新たな事態を引き起こそうとしているのだろう」
ふむふむ。多分、僕もその片棒はかついでいるのだろう。この地縛神の存在がどれだけ次元を揺さぶったのかはわからないが、この際その割合は問題じゃない。それに斎王の言葉のおかげで、もう1つ思い出したことがある。あの斎王が車椅子を押すよぼよぼの老人、あれは影丸会長だ。確かに言われてみれば、アカデミアのパンフか何かで写真を見たことがある。三幻魔の時は色々ニアミスして会えなかったから、こうして直接顔を見るのは初めてだ。
それにしても、いないと思ったら退学届なんて書いてたのか十代。まーたそうやって勝手なことやって。
「それで、なんでそれを俺に知らせに来たんだ?」
「これは、我々がデュエルモンスターズを悪用した報いかもしれん。身勝手なのは承知の上だが、我々はいまだ入院患者。十代君、君にこの事態を収拾してほしい」
そう言って、頭を下げる斎王と影丸会長。多分この結論にたどり着くまでに、何度も何度も考えたのだろう。十代に、またしてもすべてを押し付けてしまっていいのか。あれだけ世界を救ってきた本物のヒーローを、またしても新たな戦いの最前線に押し付けるなんてことが許されるのだろうか。だけど、他に道は
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