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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十八話 流血の幕開け
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った、改革をせぬ限り、軍は使い物にならん……。このままでは卿らは孤立するぞ」
孤立、その言葉が重く響いた。例え貴族寄りの立場を取ろうと貴族達は己の利を追うばかりで信用は出来ん。そしてこのまま無為に時を過ごせば平民達から憎悪の対象となるだろう。誰も我らを助けようとはしまい……。
「……しかし、貴族達の出兵は卿が止めたばかりであろう。出兵の名目が立つまい」
リッテンハイム侯が戸惑うような口調で問いかけた。
「私が死ねば方針が変わってもおかしくは無い。改革に反対するのであれば軍に代わって反乱軍を討伐してみよ、連中にはそう言えば良かろう」
貴族達と反乱軍を噛み合わせる……。上手くいけば共倒れという事も有り得るだろうが侯は貴族達は反乱軍に、ヴァレンシュタインに勝てぬと見ているようだ。悪い手ではない、しかし……。
「しかし、そう上手く行くか? 連中とてヴァレンシュタインの手強さは分かっていよう。イゼルローン要塞で防衛戦のみしていれば良いと言われればそれまでではないか」
わしの隣でリッテンハイム侯が頷いている。
「勝つことでしか平民達を抑えられぬと言え。貴族達の武力が恐るべきものだと平民達に認識させなければ平民達は大人しくならぬと。そのためには勝利が必要だと」
「……それは分かるが」
口籠る我らに対しリヒテンラーデ侯が口を歪めた。嘲笑か、或いは冷笑か。
「それでも動かねば、ヴァレンシュタインを斃せば娘の婿に考えても良いと言えば良かろう」
「娘を餌に使えというのか」
思わず非難がましい口調になった。だが横たわる老人は動じなかった。今度は明らかに嘲笑と分かる笑みを浮かべている。
「慾の皮の突っ張った連中だ。甘い夢を見て眼の色を変えて出兵するであろうよ」
「しかし……」
「娘など他に役に立つまい、違うか?」
「……」
リヒテンラーデ侯が咳込んだ。わしもリッテンハイム侯も黙って侯を見ている。
「今宵、ここでテロが起きた。次に犠牲になるのは卿らぞ、非常のとき、非情の策を用いよ。情に囚われていては滅びの道を選ぶ事になる。卿らが滅びるときは帝国が滅びるとき、それで良いのか?」
二人とも声が出ない。ただただ眼の前で横たわるリヒテンラーデ侯に気圧されている。
「ヴァレンシュタインを甘く見るな。彼奴、わざとイゼルローン要塞を取らなんだ」
「どういう事だ、リヒテンラーデ侯」
わしの問いかけにリヒテンラーデ侯が蒼白な顔に凄みのある笑みを浮かべた。
「イゼルローン要塞を取れば帝国が改革やむなしで一つにまとまると見たのであろう。敢えて取らずに帝国を分裂させおった」
「まさか……」
「他には考えられぬ。要塞が無事だった事を皆が喜んでいるが、あの要塞が無ければ帝国は一つにまとまったかもしれぬ……」
「信じら
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