SAO:tr3―この世界での日常―
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アスナが言っていた六十一層『セリムブルグ』という所は美しい城塞都市。華奢な尖塔を備える古城を中心とした市街はふんだんに配置された緑と白亜の花崗岩で精密に造り込まれている。簡単に言えばヨーロッパにありそうな美しい街並みである。
ここの面積はほとんどが湖で占められており、外周部から差し込む太陽、または月の光が水面を煌く様はまさに絶景。市場も店も豊富で、『セリムブルグ』をホームタウンにと願うプレイヤーは多いでしょう。
だが、部屋が驚愕するほどお金がかかるらしく『セリムブルグ』に住むプレイヤーは、余程ハイレベルに達さないかぎり入手するのは不可能に近いと言われている。
電気街と城塞都市との空気が明確に離れているせいなのか、または夕陽によって茜色に輝く街並みの美しいのか、兄は両手を伸ばしながら深呼吸をした。
「うーん、広いし人は少ないし、解放感があるなぁ」
「まあ、なんとなく気持ちはわからなくないわね」
「……お前、ほんと素直じゃないな」
「兄に言われたくない」
私と兄との何でもない日常会話を先頭に立って案内しているアスナがこんな提案をしてきた。
「なら二人共も引っ越せば?」
「「金が圧倒的に足りません」」
私も兄もできたら『セリムブルグ』に住みたい。きっと『セリムブルグ』は将来、海外でこんな美しい街で暮らしたいと思う人は多いはず。私もそうだもん。
でも私達にはお金が足りないのである。
実はお金が圧倒的に足りたいわけではないんだよね、兄は知らないけど。一応頑張れば住むこともできるのだが、そうしたら今ある家具や武装を売らないといけなくなる。そこまでするのなら今の家で我慢して攻略や生活に必要な物を買った方が良いよね。そもそも『アルゲード』が気に入っているわけだし、ここは私には合わないと思うんだよね。そういうことにしよう。
「ところで、アスナ。先ほどの護衛は何なの? さっさと護衛廃止した方が良いわよ」
アスナの隣にいるドウセツが遠慮なしに訊ねてきた。
私と兄が遠慮して聞かなかったことを唐突に言いやがったよ、この人。
ドウセツの問いにアスナは動かしていた足を止めて答えた。
「……わたしも護衛なんて行き過ぎだと思っている。いらないってなんども言っているけど……ギルドの方針だからって、参謀職達に押しきれちゃって……」
「面倒ね。だったら私の様にギルドをやめればいいのよ。今抱えている事から楽になれるわ」
「そう言うわけにはいかないの」
アスナは首を左右に振って、やや沈んだ声で続ける。
「昔は団長とイリーナさんと二人ずつ声をかけて作った小規模ギルドだったのはドウセツも知っているでしょ」
「そうね」
「でも人数がどんどん増えて、メ
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