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SAO−銀ノ月−
歌声
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ったんだから』

 その少女は、ARアイドルとして活動していた、黒い衣装に身を包んだユナ。まだ確かな部分のエイジの記憶によるならば、彼女は悠那を蘇らせるための受け皿でしかなく、計画が終わった今は消去されていた筈だった。しかして目の前には確かに、拡張現実の世界にユナは生きていたままで。

『みんなに歌を届けるのが私の夢だもん。その夢はさ、エイジがいないと叶わないから』

「……そんなことはないさ。ユナなら、もう空っぽな僕なんていなくても大丈夫だろ?」

『ううん。みんなの中にはさ、エイジも含まれてるんだから。ずーっと、私の隣で歌を聞いてもらわなきゃ!』

「あ……」

 歌を歌うだけの、SAO生還者に悠那の記憶を刺激させるだけの、ライブという名目でSAO生還者を一ヶ所にまとめるだけの、ただ計画のためだけのプログラム。そう教授には説明されてきたが、そんな彼女がどこかで聞いたことのある夢を語っていて。

『……だから、生きていて。エーくん』

「……うん……」

 始めて聞いたエーくんという呼び方に困惑しながらも、必死に懇願するユナに鋭二は頷くとともに、どこかで不思議と確信する。胸中に残る少女の歌と、やがて世界にすら届く彼女の歌。それらが響き渡る限りは、自分は生きることが出来る、と。


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