歌声
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早くリズが手でストップの意を示し。近くにあった自販機から《オーグマー》の懸賞で飲み物を買うと、そのまま飲み干す勢いでグビグビとペットボトルから水分を補給していく。
「ぷはー……ごめんごめん、もう暑いわねぇ」
「いや……なんか用事でもあったのか? いつでもよかったのに、こっちは」
「あー……そういう訳じゃないのよ? ちょっとその、女の子の外出までには時間がかかるってだけよ」
スポーツ飲料をどんどんと口に含んでいきながら、多少なりともかいている汗を手で扇ぎつつ、リズは口ごもりながら返答する。言われてみればそのセットされた茶髪が、普段の学校や外に出かける時よりかは、言われれば気づかない程度に乱れていたりするような――
「こら。そんなジロジロ見るのはマナー違反よ」
「……悪い。ほら、改めてありがとう」
そんなこちらの視線から返ってきたのは、殺意のこもった冷たいジト目で。雲行きが怪しいとバッグから弁当箱を取り出すと、よろしい、という言葉とともにリズへと受け渡される。
「その……また作って欲しい?」
「ハンバーグを焦がさないようになったら頼む」
「ちょ……ちょっと焦げてた方が美味しいのよ!」
などと言ってはいるが、あまり作る機会はないだろうな、というのはお互いに分かっていた。むしろ何の恥ずかしげもなく学校で弁当を食べだす桐ヶ谷夫妻はなんなのだと、二人とも小一時間ほど問いただしたいほどで。
「……ああ、そうだ、リズ」
「なによ、改まって」
今度リズに会った時に聞こうと思っていたことを思い出し、怪訝な表情を隠さないリズへと可視化させた《オーグマー》の画面を見せる。可視化とは言ってもあくまで拡張現実のため、《オーグマー》を装着した者にしか見えないが、リズも装着しているためそこは問題はない。
「これって……?」
そこに表示されていたのは、《オーディナル・スケール》のランキングによって貰える景品の数々で、そのほとんどが牛丼屋の割引券などだったが、上位ランキングの景品ともなれば流石に違う。現にアスナもキリトへのお返しとしてバイクのグローブを買えたらしく、先のキリトも珍しくウキウキとした様子でツーリングに向かっていっていた。
「リズさ。その……誕生日プレゼント、何がいい?」
「えっ? ……もしかして、あんたが《オーディナル・スケール》にハマってたのって……」
「……そういうことだろ」
――そもそも、俺が《オーディナル・スケール》をプレイしだしたのは、リズへのプレゼントを入手するためだ。先の事件でうやむやになっていたが、リズの誕生日はもう二週間ほど後に迫って来ていると、もはや悩んでいる猶予など俺にはなく。サプライズしてやりたいという気持ちがないではなかった
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