歌声
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いうことだと。そこを問い詰めたくはなったものの、実際のところレインの言う通りなのだからぐうの音もでない。駅の路線図を見つつ思い出しながら言ったが、この辺りの電車ならば一時間もすれば何処にでも行けるだろうが、念のためにバッグから《オーグマー》を取り出しつつ正確に調べ始める。
「よし! リズっちにはわたしが連絡してあげるからさ、早く行ってあげなきゃ!」
「……どうしたんだ?」
「いいからいいから! 女の子の気持ちは、レインちゃんの方がよく分かってると思うけどなー?」
「む……」
唐突に必要以上に元気となったレインへ怪訝な表情で問いかけたが、女の子の気持ちなどと問われてしまえば、たまに相談させていただく身としては何とも言えない。返答に窮して髪を掻くこちらを面白そうに笑うレインに、何か言い返してやろうとも思ったが今の俺に出せるカードはなく。
「……分かったよ、行ってくる」
「頑張ってね!」
――何がだ。何をだ、と先ほど聞いたばかりの朝帰りの話を全力で頭から追い出して。ちょうど電車が来たところということもあって、レインの申し出をため息まじりに承諾すると、手を振って反対側の改札へと別れて昇っていく。そもそもいくら俺が急いだところで、電車の移動時間を待たざるを得ないにもかかわらず、わたしが連絡してあげるから急いで……とはどういうことか。
「……」
応援してくれるのはありがたいが。一応こちらでも、《オーグマー》によって路線検索と平行してリズにチャットを送っていく。慣れない手つきで『レインから連絡は来たか』と打ってみれば、向こうもこちらに連絡を取ろうとしていたのか、すぐさま返信がきた。
『えきまえでまちあわせしましょ』
……この短い時間でレインとどんなやり取りをしたのか知らないが、何やら慌てていたのか、全文が平仮名で返ってくるという謎はあったけれど。俺にも分かる事実が一つだけあった。その事実に落胆したような、安心したようなそんな不思議な感覚を味わいながらも、とにかくその事実だけは明らかだ。
――家庭訪問は、どうやらお預けらしい。
「ショウキ!」
「珍しいな、俺の方が早いなんて……どうした?」
駅前でしばし待った後、こちらの名前を呼び止める声がして。普段はどんな時間に来ようがリズの方が速く来ているため、珍しいこともあるものだと軽口を聞いてみせれば、息をせききった様子のリズが肩で息をしつつ立っていた。やたら動きやすそうな服といい、どうやら走ってきたようで。
「大丈夫か、そんな急がなくても……」
「ちょ……ちょっと待ってて」
まさかそこまで慌ててくるとは思ってもみずに、軽口などは止めて本気で心配するような声音が出てきたが、その言葉が最後まで紡がれるより
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