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SAO−銀ノ月−
歌声
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られてならないが。とにかく菊岡さんからは『もう心配しなくていい』という言葉と、悠那の父である重村教授が《オーグマー》の責任者から降りたというニュースは聞いたものの。

 直接エイジから暴行を受けて、病院送りになっていたクラインや《風林火山》のメンバーが訴えればまた違ったのかもしれないが、レインから事件の真相を聞いた彼らがそんなことをするわけもなく。何か思惑があるらしい菊岡さんにしても、ただの実行犯でしかなかったエイジを追う訳もないだろう。

 ましてやエイジのリアルのことなど、今以上にはまったく知らない俺たちには、足取りを追うことなど出来るはずもなく。こうしてエイジは、永遠に俺たちの前にその姿を見せることはなかった。

『難しいな……』

 ――最後にエイジと交わした言葉が脳裏に蘇る。今まで悠那のために生きてきたというのに、悠那を忘れて何をすればいいんだ、という問いに対して。悠那の分まで生きるしかないと、そう喉元から絞り出したものの、エイジからの返答は芳しいものではなく。もう少し、もう少しだけ自分が何か言ってやれたならば、また違う結末が……などと傲慢なことを言うつもりはない。

 それでも、せめて生きていてくれ、という祈りを込めて。

「……わたしもユナの分まで歌うから。きっと、エイジくんも……」

 レインの言葉もその先は続かない。もはや俺たちに出来ることはなく、強いて言えば、レインが悠那の遺志を継いで歌を届けることのみだ。最後に空を仰いだ後、この話はもう終わりだとばかりに一息ついて。新たな質問をレインへと投げかけた。

「仕事は大丈夫なのか?」

「こう見えてもレインちゃん人気者なんですぞ? ……いや、今回の件のお詫びだと思うけど」

 仕事に送りだしたら、先方に《SAO》の記憶を奪われて家に閉じこもることになるなんて、こっちも思ってもみなかっただろうけど――と、冗談めかして笑ってみせて。その様子を見るに、どうやら余計な心配だったらしい。

「まあまあ、そんなレインちゃんのことより! これからリズっちの家庭訪問するんでしょ?」

「ああ……まあ」

 そろそろ所沢の駅が見えてきたところで。目を興味津々と輝かせて身を乗り出してくるレインの姿に、若干ながら引きつつ先程の心配を返せと言いたくなるが、とりあえず目を逸らしながら肯定する。直葉に返すつもりだったリズの弁当箱をバッグの中に入れているため、確かに今からリズの家に行ったところで何ら問題はない。

「ショウキくんのことだから、リズっちの家に行ったことはなくても、場所は知ってるんじゃないの?」

「ちょっと待て」

「でも知ってるでしょ? どれぐらい時間かかるの?」

「……まあ。一時間、ぐらいか」

 ショウキくんのことだから、とはどう
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