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SAO−銀ノ月−
歌声
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、と自問自答せざるを得ないとともに鬱屈した感情が貯まっていったが、気づけば二人の頬が稽古とは関係なく紅潮していて。

「じゃ、じゃあ稽古の続きしましょうかレインさん!」

「う、うん!」

「もうか!?」

 答える方が拷問に等しいのはもちろんのことだが、どうやら聞く側にとってもなかなかに照れくさいらしく。そんな誰にとっても幸せになれない話は、照れ隠しによる休憩終了によって、我関せずを決め込んでいたキリトをも不幸にした。メンバー全員を苦しませつつ稽古は再開したが、稽古に打ち込んでいるうちに直葉の機嫌も少しは晴れたらしく、特にそれからは何があるわけでもなく。

「明日、筋肉痛になってなければいいんだけど……」

「お疲れ様」

 稽古も終わり、桐ヶ谷家のシャワーをそれぞれ借りた後、俺とレインは駅へと向かっていた。シャワーでさっぱりしたとはいえ、そろそろ夏に近づいているからか、もう汗ばむ季節だというのは確かで。涼しげな服を着こなしているレインも、少しばかりうんざりとした様子でいて。それでもこちらに振り向いた彼女は、真剣そのものの表情だった。

「ね、ショウキくん……ありがとね。ユナのこと」

「俺は……」

「ううん。ショウキくんのおかげで、ノーチラス……エイジくんも、本当に取り返しのつかないことにはならなかった」

 俺は何も出来やしなかった、と返すよりも早く。レインはこちらの言葉を否定しながらも、ステップを刻むように歩き天を仰ぐ。それはこの世界にはいない悠那に何かを報告しているようだったが、その表情はまったく晴れやかなものではない。真っ先に記憶を奪われてしまったからとはいえ、《SAO》の時の友人の暴走を止められなかったのならば、それも当然だろう。

「エイジは?」

 さらにもう一つ。言外の言葉をも込めたこちらの問いに対して、レインは言葉もなく首を振った。その手には携帯端末が握られていて、振り向いて見せてくれた着信履歴には、『後沢鋭二』という察するにエイジの本名が幾つも表示されていて。

 ……あのライブで悠那が二度目の死を迎えた後、エイジはライブステージから姿を消していた。アイドルの仕事として再会していたため――今から思えば、レインを通してSAO帰還者の記憶を奪えるかチェックする予定で、レインをバックダンサーとして雇ったのだろうが――連絡先を交換していたレインによる電話にも、まったく応じることはなく。

 そして《オーディナル・スケール》の事件は菊岡さんの手によって預けられたために、その関係者であるエイジも表立っては探されてはいないようだった。まだ《オーディナル・スケール》のイベントはそこかしこでやっているし、先のユナのARライブは大成功として伝えられていて、関係者としては多分に何らかの思惑が感じ
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