歌声
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のポニテ姿に見とれちゃったかなー?」
「……いや、ちょっとキツく結びすぎじゃないか?」
「そこまで否定されると傷つくんだけど……キツくって、帯?」
ショウキくんはリズ一筋だから仕方ないけどさ、とぼやきながら胴着の帯を確認するレインには、どうやら本当に見とれていたことをバレずに済んだようだ。ともあれ事実をごまかすために言った一言だったが、確かにレインの胴着の帯は必要以上にキツく結ばれていて、あれでは息苦しくて疲れもするだろうと。
「いや、でも……キツく結ばないと……直葉ちゃんの、胸のところがブカブカで……」
「え?」
「……ショウキくん。それ以上乙女の秘密に抵触したら、リズにセクハラされたって言いつけるよ?」
「……了解」
……どうやら、男が触れてはいけない場所に触れてしまったらしい。怒気をはらんだレインの言葉に手を挙げて降参の意を示すと、レインは鼻を鳴らしてそっぽを向く。とはいえ不機嫌そうなポーズというだけだったらしく、すぐにこちらへと振り向くと。
「ね、最近リズっちとはどうなの?」
「直葉、この前借りた弁当箱のことなんだけど」
「逃げたー……」
レインの非難の視線を甘んじて受けながらも、今日この桐ヶ谷家に来たそもそもの用事を思い出す。先日の《オーディナル・スケール》の一件の折、リズが直葉のものだと偽装してお手製の弁当を作ってくれてきていて、その時の弁当箱を返し損ねていた。キリトとともに渡されたので、こちらとしては当然のように桐ヶ谷家の弁当箱だと思っていたのだが、直葉はポカンとした表情を見せていて。
「弁当箱? ……あ、バレてるよね? 弁当箱もリズさんのだけど」
「改めて中途半端な偽装工作だな……」
直葉も偽装工作はさっさとバレるとは思っていたのか、少しだけの確認にこちらが頷くと、何の気なしにそう言ってのける。桐ヶ谷家の弁当箱ではないとなると、つまり――
「話はよくわからないけど、それならリズっちの家に返しに行かないとね〜」
「そういえばショウキくんって、リズさんの家に行ったことあるの?」
「…………」
女性陣二人の追求に対して、キリトに助けを求めるように視線を送るものの、さっきのお返しとばかりに意図的に無視されて。観念して女性陣に向き直ると、興味津々といった様子を全身から漂わせているレインと直葉の様子に、何かしらを答えないと許してもらえないと確信する。
「ショウキくん。たまに相談とか受けてるから……ね?」
「……ない」
「ショウキくんの家に招待したことは?」
「…………ある」
最初の脅迫めいた質問への答えには不満そうだったものの、続いての答えは満足げに黄色い歓声があがる。俺は一体何のためにここに来たんだ
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