巻ノ九十五 天下の傾きその六
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「やはりな」
「はい、それでもですな」
「何時かはですな」
「この山を出てですな」
「そしてそのうえで」
「再び」
「世に出たいともじゃ」
実際にとだ、幸村はこうも言った。
「思っておる」
「そうですか」
「どうにもですか」
「この山を出てですな」
「そして再びですな」
「この世で、ですな」
「もう一度」
「そうも思う、果たして拙者達はどうなるか」
幸村は不安も述べた。
「また世に出られるかここで終わるか」
「それがですな」
「どうにもわかりませぬな」
「先のことは」
「全く」
「世に出られると信じておる」
この気持ちはあるというのだ。
「確かにな」
「はい、それはです」
「我等も同じです」
「必ずです」
「我等はまた世に出られます」
「その日が来ます」
「そう思っておる、しかしな」
そう信じていてもというのだ、人の気持ちは何かと複雑だ。それで信じているのと共にというのだ。
「信じておってもな」
「ついついですな」
「そうも考えてしまいますな」
「若しやと」
「その様に」
「時に大助じゃ」
幸村は我が子の話もした。
「あ奴はここで生まれた」
「そしてですな」
「このままですな」
「ここで過ごされるか」
「そうなると思うと」
「あ奴は外で過ごすべきじゃ」
これが幸村の我が子への考えだった。
「他の子達もな」
「左様ですな」
「やはりです」
「この様な狭く寒い山からです」
「出てそしてです」
「外で過ごされるべきですな」
「天下でな、そう思う」
父としての心からの言葉だった。
「拙者はな」
「全くですな」
「そこはです」
「何としてもそうして頂きたいですな」
「天下をそのお目で広く見られて欲しいです」
「そうも思う、だからこそ余計に感じるわ」
これからのことへの不安、それをというのだ。
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