第54話<用意周到>
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
ながら、日向はテキパキと発車の準備を進める。
荷台側では祥高さんが軽く点呼をした後、次々と乗り込む艦娘たち。やっぱり周囲の墓参の人たちの注目を浴びているが、それは全く気にしていない彼女たち。強いな。
やがて祥高さんと無線でやり取りをした日向は私に報告をした。
「司令、点呼は問題なし。出発準備、完了です」
「よし、では実家ヘ向けて発車だ」
「了解」
敬礼と同時に私もトラックに乗り込んだ。そして再び走り出す。
「結局……実家へ向かうことになってしまったか」
私は呟いた。
(あまり広くない実家が艦娘で満杯になるぞ)
これから実家で起こり得る事態を勝手に想像して私は独りドキドキしていた。
日向はハンドルを握りながら教えもしないのにスムーズに実家の方角へと向かう。
(あれ?)
私が疑問に思っていると彼女は、それを察したように説明する。
「秘書官から『念の為に』とのことで司令の、ご実家を中心とした境港市の詳細な市街地図情報も頂いてました」
「あ、そうか」
私は、そう応えるしかなかった。
「敵が攻めてきたときの効率的な作戦立案のためだよ」
急に寛代が呟く。
「分かっているよ」
いや、本当は分かっていなかった。
(用意周到な秘書艦だ)
いや……秘書艦としては、そのくらい手を廻しても当然か。
そんなことを考えている間にトラックは実家へと到着した。家の前の道路は狭い。トラックだとギリギリだ。
(うわ、大丈夫かな? また近所迷惑じゃないかな)
しかし、さすが艦娘たちも軍人だ。狭い実家前の道路に乗り付けた途端、私の心配をよそに彼女たちは一分も掛からないうちに一斉に下車して点呼。そして混乱することなく実家の呼び鈴を押した。
母親が顔を出すと、秘書艦が言葉を交わして驚くほどスムーズに家の中へ入って行く。
(こういうときだけは規律正しいんだな)
私は感心するやら、呆れるやら。
「司令?」
「……あ、ああ」
日向に声をかけられた私は、ハッとした。
「そうだな、降りよう」
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ