第54話<用意周到>
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
(まずい、まずい)
私が焦っていると、さらに加勢がきた。
「えぇ! それは本当ですか!」
「Oh! ワンダフルね!」
こういうことには遠慮が無い金剛姉妹が加わる。もはや止められない。
艦娘たちが緩やかに母親を囲んだ。帰りかけていた隊列が一気に崩れる。
(そうか、敵は本能寺にあったか)
母親は自分より背の高い艦娘たちに取り囲まれてタジタジ……でもなかった。
ケラケラと大笑いしながら楽しそうだった。
(女性同士だから……かなあ)
一瞬にして蚊帳の外に追いやられた私と父親。
ふと目が合った。場が持たない私は父親に近寄って会釈をした。
腕を組んでいた彼は私を見ながら、おもむろに言った。
「お前も大変そうだな……」
「うん」
艦娘たちも父親と私に注目しているが彼は全く動じなかった。
「軍隊はな、そんなところだ。まぁ頑張れ」
「ありがとう」
私は頷いた。
(そういえば何年ぶりだろうか? 父子の会話って)
艦娘たちと打ち解けている母親の姿を見ながら私はふと思った。
考えてみれば美保鎮守府への着任が無ければ、地元に戻っていなかったかも知れない。当然、父親と言葉を交わすことも無かったかも……。
「不思議なものだな、艦娘って」
改めてそう感じた私は思わず呟いていた。
やがて艦娘たちとの会話にひと区切りを付けた母親は墓参道具を片付けながら私に声をかけた。
「じゃ、お母さんたちは先に帰っとるけンな、後から来いよ」
「うん」
私たちの方を向いて会釈をして立ち去る母親。金剛たちを筆頭に艦娘たちもニコニコして手を振っていた。
そして意外だったのは、父親もまた私たちに軽く敬礼をしたことだ。
「え?」
私は条件反射的に慌てて返礼をした。すると艦娘たちも軒並み敬礼を返していた。
それは私が初めて見た父親の『軍人らしい姿』だったかも知れない。
同時にそれは彼が艦娘を兵士として認めているようにも感じられた。
私は、なぜだかとても嬉しくなった。そうか、部下を持つ指揮官とは、こういうものなのか。
「司令のお父様って、素敵な方ね」
これまた意外な事を言う龍田さん。
評価基準の厳しそうな彼女から、そういう台詞が出るということは父親もまた、艦娘に一目置かれる軍人の香りがするに違いない。
そこは軍人としては父親に、まだまだ遠く及ばない私なのだと素直に思えた。
そして、ここまでの流れが分からないまま戻ってきた美保の軍用トラックだった。
運転台から日向と言葉を交わしていた妖精ハルが言う。
「何だ? 直ぐに帰らないのか」
「ああ、予定が変わった。運転を代わろう」
不思議そうな顔をしている妖精を懐にしまい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ