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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六十七話 クーデター計画
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准将と連絡を取っている。正確には向こうから接触してきた。ミューゼル中将の考えだそうだ。どうかな、リッテンハイム侯、手を組まぬか」
「手を組む?」
「このままでは貴族と平民の間で身動きが取れん、周りに流されていくだけだろう。それは余りにも危険すぎる」
「だからと言って……」
リッテンハイム侯が胸を喘がせている。侯がまたグラスを呷った。カチカチと歯とグラスのぶつかる音が聞こえた。空になったグラスにまたワインを注いだ。
「貴族達の機嫌を取っても帝国は安定するまい。連中は図に乗り平民達は不満を募らせるだけだ」
「……」
「このあたりで貴族たちを一度強く叩くべきだとわしは思う。連中と共に自滅するつもりなら別だが」
リッテンハイム侯が激しく首を振った。
「それは出来ぬ。我らは帝室の藩屏として存在してきた、他の貴族達とは違うのだ! 我らが滅びるという事はゴールデンバウム王朝そのものが危機に瀕するという事であろう、そのようなことは出来ぬ!」
「ならば協力してくれるか、侯が味方に付いてくれれば心強い」
「……信じられるのか、ミューゼル中将を。危険ではないのか、あの男は……」
「野心家だというのだな、そして我らを敵視していると」
リッテンハイム侯が頷いた。確かに危険はあるだろう、否定はできない。
「場合によっては始末するか、或いは取り込むかだな」
「取り込む?」
「我らには娘しかおらん、婿の決まっていない娘しかな」
侯の目が大きく見開かれた。そして囁くように問い掛けてきた、
「本気か? 爵位も持たぬ小僧だぞ、それを婿にするというのか」
「軍の中では有力者になりつつある。下手に有力貴族から婿を決めるよりも良かろう、平民達を刺激せずに済む。それに……」
「それに?」
「娘を守る番犬だと思えば腹も立たぬさ」
思わず笑い声が出た、低い嘲笑うかのような笑い声だ。自分で言っていて自分で嘲笑っている、馬鹿げた話だ。リッテンハイム侯がわしを呆れた様な顔で見ていた。その顔が可笑しかった、また笑い声が出た。
そろそろ会場に戻らねばなるまい、リヒテンラーデ侯が待っているだろう……。
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