ルーシィVSエバルー公爵
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エバルー屋敷地下の下水道。その壁際で、ルーシィは腕を掴まれていた。腰の位置、壁から顔と腕を出すエバルーが意地悪く卑しい笑みを浮かべながら、掴んだ腕を折ろうと更に力を込めてくる。
掴みかけた鍵の束は掴み損ねて足元に落としてしまった。この状態では腰に束ねて下げた鞭を掴む事も出来ない。今のルーシィに、打てる手がない。
「文学の敵だと!!?我輩のような偉――――くて教養のある人間に対して」
「変なメイド連れて喜んでる奴が教養ねえ……」
「我が金髪美女メイドを愚弄するでないわっ!!」
「痛っ!!いろんな意味で…」
共に仕事に来たナツも、よく解らないがいたニアも、ここにはいない。この状況を、ルーシィ一人で打破しなければならない。
「宝の地図か!?財産の隠し場所か!?その本の中にどんな秘密がある?」
痛みに耐えるルーシィの顔を覗き込むようにして、エバルーが下卑た笑みを深める。その視線を感じながら、歯を食いしばって顔を逸らした。
唯一自由な足をじりじりと動かす。右足から少し離れた位置に広がって落ちた鍵の束を目で捉えながら、少しずつ足を近づける。
「言え!!!言わんと腕をへし折るぞ!!!」
苛立ったような声色で、エバルーが脅す。その脅し通りに、掴まれた腕が更なる痛みを訴える。
だが、言わない。一言だって喋らない。この本に書かれていた秘密を知るべきなのは、エバルーなんかじゃない。腕は痛むけれど、だからどうした。それから逃げる為だろうが、絶対に。
逸らしていた顔をエバルーに向ける。痛みを耐えながら、ベー、と舌を出して見せた。お前に言う事なんて何もないと、突き付けるように。
「っ、調子に乗るでないぞ!!!小娘がああ!!!」
「あぐっ!!」
「その本は我輩の物だ!!!我輩がケム・ザレオンに書かせたんじゃからな!!本の秘密だって、我輩の物なのじゃあっ!!!!」
そんなルーシィの態度は、当然エバルーを苛立たせた。無理矢理横に広げていた腕を更に広げて、手首を掴む手に更に力を込めていく。あまりの痛みに、堪えていた呻きが漏れた。
―――いい加減、駄目かもしれない。エバルーに対する策はなく、鍵は足元で、鞭は掴めない。秘密を離す気はもちろんないけれど、腕もそろそろ限界だ。このままだと、ルーシィの両腕は折れるだろう。本の秘密を話そうだなんて、この状況でも微塵も思っていないのだから。
「おおぅ!!?」
エバルーの凄む声。それに続く、ぼき、と何かが折れる音。思わず音がした方向、自分の左腕に目を向けて、違和感に気がついた。
折れた音がした割に、その痛みは全くないのだ。けれど確かに音は聞こえて、それは間違いなくルーシィの左腕の辺りからで。
「おおぉ!!!」
「ハッピー!!!」
ルーシィの左腕、を掴んでいたエバ
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