ルーシィVSエバルー公爵
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同じように独房で鎖に繋いで、同じだけの月日を過ごさせて、それ以上の責め苦に合わせれば少しはマシになるか?》
「な…」
《なあ嬢ちゃん、アンタは知ってるんだろ?作家先生がどれだけの間独房にいたか。どれだけの間、コイツの阿保らしい欲望に付き合わされてきたか》
「……三年よ」
吐き出すように呟く。ハッピーが言葉を失ったように両手を口元に当てた。
「自分の欲望の為にそこまでするのってどうなのよ!!!独房に監禁されてた三年間、彼がどんな想いでいたか解る!!?」
「我輩の偉大さに気づいたのだ!!!」
「違う!!!自分のプライドとの戦いだった!!!書かなければ家族の身が危ない!!!だけど、アンタみたいな大バカを主人公にした本なんて……作家としての誇りが許さない!!!」
自分のプライドを取れば、家族は市民権を奪われる。けれど家族を取って作品を書けば、自分は最低最悪の本を世に残す事になる。どちらも大事な二つに挟まれ、暗く狭い独房の中で、三年間も拘束されて。
書きたくなんてなくて、けれど書かざるを得なかった物語。その一文字一文字を綴る度に葛藤して、苦悩して、投げ捨ててしまいたくなって、それでも書き進めて。その辛さを嗤ったエバルーが、地面から身を起こしてルーシィを睨みつける。
「貴様……何故それほど詳しく知っておる?」
「全部この本に書いてあるわ」
「はあ?それなら我輩も読んだ。ケム・ザレオンなど登場せんぞ」
「もちろん普通に読めば、ファンもがっかりの駄作よ。―――でも、アンタだって知ってるでしょ?ケム・ザレオンは元々魔導士」
《つーかお前、気づいてねえの?読んでない上に魔導士っていうには微妙なラインの俺ですら、この本見ただけで魔力くらいは感じたけど?》
「…、…な……!!!まさか!!!」
「彼は最後の力を振り絞って…この本に、魔法をかけた」
怪訝そうだったエバルーの顔が、その一言で崩れた。何かに気づいたように目を見開いて、眉を吊り上げて、声を怒りで震わせる。
「魔法を解けば、我輩への怨みを綴った文章が現れる仕組みだったのか!!?け…けしからんっ!!!」
《へえ?怨まれるような事してるって自覚はあったんだ、意外や意外》
けらけらと声を上げて、わざとらしく口元を手で隠したパーシヴァルが嗤う。形だけ笑むように作られた、ゆるりと細める目は視線の先を見下すように冷え冷えとしていて、エバルーが歯をぐっと食いしばった。
「発想が貧困ね…確かに、この本が完成するまでの経緯は書かれてたわ。だけど、ケム・ザレオンが残したかった言葉はそんな事じゃない。本当の秘密は、別にあるんだから」
「な…っ!!!何だと!!!?」
「だからアンタにこの本は渡さない!!!てゆーか、アンタに持つ
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