ルーシィVSエバルー公爵
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」
一切の悪気もなく言ってのけたエバルーを睨みつける。
確かに、エバルーは偉いのかもしれない。人間性に難あれど金持ちなのは事実で、けれど、だからといって何でもしていいのかと問われればそれは否だ。偉いから無理が何でも通る訳ではなく、脅迫なんて以ての外。そんなものは、偉い偉くない問わず間違った行為なのだ。
だが、エバルーは悪びれない。自分の要求は全て通って当然なのだと、さも常識を教えるかのように語っていく。
「偉――――いこの我輩の本を書かせてやると言ったのに、あのバカ断りおった。だから言ってやったんだ。書かぬと言うなら、奴の親族全員の市民権を剥奪する、とな」
「市民権剥奪って…そんな事されたら、商人ギルドや職人ギルドに加入出来ないじゃないか。コイツにそんな権限あるの!?」
「封建主義の土地はまだ残ってるのよ」
《だからこんな奴でも、この辺りじゃ身の丈に合わない権力振り回してるって訳か……っと、そこっ!!!》
頭から潜っていったエバルーを探し周囲を見回していたルーシィの体が、突然横から掻っ攫われた。驚いて目を見開くと、一瞬で距離を詰めていたパーシヴァルが肩の辺りと膝裏に手を回し、ルーシィを抱えている。あの一瞬で突き飛ばすのではなくしっかりと抱え込んだ彼の動きの素早さに驚く一方で、何があったのか理解が追い付かない。
と、風のような速さでルーシィを抱えて跳んだパーシヴァルの目が床に向く。開いた穴で気づけばほぼ水が抜けていた下水道から、エバルーの手が伸びていた。
「チィッ!!」
《触んなスケベ、セクハラで訴えんぞ!!!ギャラハッドに!!》
地面から顔を出したエバルーの舌打ちに、ルーシィを降ろしたパーシヴァルが睨みを返す。
先ほど彼に仕掛けたように、今度はルーシィの足を掴もうとしていたらしい。もしそうされたらヒールでその手を踏みまくってやる、と決意しながら「ありがとね」と囁くと、パーシヴァルはちょっと目を丸くして、それから笑って一つウインクをした。茶目っ気たっぷりの仕草をしたその顔が、エバルーに向いた途端、ふっと冷えた笑みに変わる。
《で?人間がやる事とは到底思えない非道な脅迫したアンタのご希望通り、その作家先生は書いてくれた訳だ。家族盾にされりゃあそりゃ従う他ないよなあ、うわあ最低》
「最低なのは断る方であろう?―――ああ、結局奴は書いた!!!しかし一度断った事はムカついたから、独房で書かせてやったよ!!!ボヨヨヨヨヨヨ!!!やれ作家だ文豪だ……と踏ん反り返っている奴の自尊心を砕いてやった!!!」
自慢げに、得意気に語るエバルーの言葉に、パーシヴァルの顔から笑みが消えた。どこか楽しむように浮かべられていた薄い笑みさえも消えて、その目が冷たく光る。
《踏ん反り返ってんのはお前の方だろうが。それともアレか?
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