ルーシィVSエバルー公爵
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ルーの腕が、変な方向に曲がっていた。
翼を広げたハッピーが、両足を揃えてエバルーの左腕に狙いを定め、勢いよく飛び込む。スピードで威力をブーストして、一撃を叩き込む。走った痛みにエバルーの手が緩み、その隙に両腕の拘束を振り解いた。
「ぎゃあああああっ!!!!」
「ナイス、かっこいー!!」
響くエバルーの悲鳴。落とした鍵の束を拾いながら目線を上げれば、にっと得意気に笑うハッピーの顔が見えた。
……と、飛んでいたハッピーの背中から翼が消える。魔力切れだ。そんな時にタイミング悪くハッピーは下水の上を飛んでいて、飛ぶ為に必要な翼が消えるという事は、つまり。
《よっ》
落ちていくハッピーの足が下水に触れかけた、瞬間。
ルーシィの横を、何かが―――否、誰かが走り抜けた。そこを通り過ぎていった際の空気の流れだけを残して、走り抜けた姿は誰の目にも留まらずに。
《と―――――!!!間に合った―――――!!!…よな?》
突風のように現れたその人は、下水を挟んだ向こう側で、ハッピーを抱えて小首を傾げていた。
《え、間に合ったよな?大丈夫だよな?大丈夫大丈夫、だって青猫落ちてなかったし、嬢ちゃんの腕折れてないし、あのくるくる髭野郎はまだ無事そうだし……》
「青猫じゃないです、ハッピーです」
《ん?ああ、そっか。悪い悪い、名前知らなかったからさあ》
ぶつぶつと何かを呟いていたその人は、ハッピーの指摘にきょとんとしてから笑ってみせた。抱えていたハッピーを降ろし、人懐っこそうな笑みを浮かべてルーシィを見やる。
《よぉ嬢ちゃん、無事ー?》
「え?は、はい!!」
《うん、いい返事だな。たいへんよろしい》
問われ、戸惑いながらも返事をすれば、満足そうに頷かれる。
結わえて尚毛先が腰の辺りまで届く灰色の長髪に、黒い瞳。纏うのは、動くのに支障が出ないようにかあれこれと手を加えられたカーディナルブルーの騎士服。動きやすさを重視したと思われる服装とは真逆に、足元は、今ルーシィが履いているサンダルと然程変わらない高さのヒールのあるロングブーツ。両手には飾り気のない、かといって武骨でもない藍色の籠手。
頭のてっぺんから爪先まで見てみたはいいが、やはり見覚えのない姿だ。聞かれたから答えたはいいものの、彼は誰なのだろう。ニアと共にいたのは見たし、多分味方なのだろうが、何者であるかは全く解らない。ニアの知り合いなのか、ルーシィが知らない彼の魔法―――“誰ガ為ノ理想郷”のうちの一人なのか、その区別さえつかない。あと、その微妙なネーミングセンスが気になる。確かにエバルーの髭はくるっと上向きに巻かれているが。
じろじろと見ていたせいだろう。青年は少し不思議そう
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