魔導士の弱点
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ツを追う事になる訳だし、ついて行くさ」
「解った、じゃあ行こうぜ。…つーか、何だったんだコイツ等」
「傭兵だろ」
倒れる傭兵二人に背を向けて、ルーシィを探すべく歩き出す。
一歩踏み出すその前にニアは小さく振り返り、与えた痛みの割に出血は少ない兄の方を少し見つめた。それから首を横に数度振って、少し先を行くナツを早足で追う。
ニアがナツを追うべく顔を前に向けた、その時に。
すぐ傍で仰向けに倒れる巨体メイドの目が鈍く光った事には、二人とも気付かなかった。
“南の狼”との戦闘が終わった、丁度その頃。
エバルー屋敷の下水道。鼠一匹以外は誰もいないその場所で、ルーシィは“DAY BREAK”の最後のページを閉じた。かけていた風詠みの眼鏡(品質にもよるが二倍から三十二倍の速度で本が読める魔法アイテム)を外し、一つ息を吐く。
「ま…まさかこんな秘密があった……なんて……」
声が震える。読み進めていくうちに気づいたそれは、こんなところで捨てていいものではなかった。この屋敷で、あんな男に所有されているなんて以ての外。この本は破棄すべきではない、届けるべきものだ。
「この本は……燃やせないわ……カービィさんに届けなきゃ……」
スカートのポケットに眼鏡を仕舞い、立ち上がる。
まずはナツと合流しなければ。そしてこの本の話をして、それから――――
「ボヨヨヨ……風詠みの眼鏡を持ち歩いているとは……主もなかなかの読書家よのう」
「!!やばっ!!!」
背後から、声がした。下水道の壁の向こう、姿の見えないその男の声。
気付いた時には遅い。両手首を壁から伸びた手に掴まれ、無理矢理横に広げられる。咄嗟に鍵に手を伸ばすが間に合わず、鍵の束が手から滑り落ちて、チャリンと高い音を立てた。広げられた左腕と腰の間の位置に、意地汚く笑うエバルーの顔が現れる。
「さあ言え、何を見つけた?その本の秘密とは何だ?ん?」
「痛っ…!!!」
掴まれた腕が痛い。歯を食いしばって耐えるものの、更に力を込められる。
けれど、屈するつもりなんてなかった。この本には秘密がある。だがそれはエバルーが知るべきものじゃない。コイツにそれを教える必要なんて、どこにもない。
「ア……アンタなんてサイテ―よ…文学の敵だわ……!!」
ぎしぎしと骨が軋む音がする。
変わらず笑うエバルーの顔を、ルーシィは痛みに耐えながら睨みつけた。
走る。駆ける。馳せる。
床を蹴って、飛ぶように。風のように。結わえた長い髪の先を、宙に置き去りにするように。
――――間に合わせなければ。
遅れる訳にはいかない。一秒だって、遅れる訳にはいかないのだ。
暗い廊下を走る
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