魔導士の弱点
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に終わったのだと、その思い込みが思い込みであると、両者共に気づいていない。その油断が命取りだというのに。実力はあるはずなのに詰めが甘い傭兵達だと、内心で嘆息する。騎士団の下、あの王国にいた一介の兵士達の方が何倍もマシだ。
唇に添えていた指を離し、その指で示す。答え合わせをするように、そっと呟く。
「オレと戦うのはまだお預けだ。――――なあ?」
指したのは、燃える赤の中。
そして、その中から、ナツが飛び出した。
――――噴き返された炎を、全身に纏って。
「何!!!?」
「火が効かねえ!!!?いや…いくら火の魔導士でもそれは……!!!」
傭兵二人の絶叫が響く。完全に予想外の事態に、二人とも対応が追い付かない。奴隷船での一戦を覚え知っているニアだけが、それを平然と見下ろしている。だから言っただろうと、冷めた目が告げている。
「聞こえなかったか?」
炎の中で、ナツがにやりと笑っていた。
「おぼっ」
「ふぐっ」
右手で兄の、左手で弟の顔を掴む。
「吹っ飛べ!!!」
そのまま、力強く一歩、前に踏み込んだ。
「――――火竜の翼撃!!!!」
ドゴオオオオッ!!!!と。
翼のように広げた両腕、傭兵二人の顔を掴む両手から炎が噴き出す。噴射の勢いで二人纏めて投げ飛ばし、一瞬にして焼き焦がしていく。距離を置いてもちりちりと伝わる熱量に、ニアがほんの少し眉を動かした。
「な…何なんだ…この魔導士は…」
「ママぁ……妖精さんが見えるよ」
「しっかりしろ!!!てゆーかもう無理か!?」
全身を焼かれ、頭を下に落ちていく。既に弟の方は戦えないようで、うわ言を呟く姿に兄は唇を噛んだ。
見誤った。ただの魔導士だろうと、これまで相手にしてきた奴等と変わらないだろうと慢心した。その結果が現状、たった一人相手に兄弟揃って敗北する様。もう一人に拳を握らせる事すらなく倒れる、文句の言いようのない完璧な負け。
「くっ……」
呻いて、見上げる。見上げた先、かち合った水色の目は相も変わらず揺れのない、凪いだ水面のようで。
――――それが、無性に腹立たしかった。まるでお前達など最初から眼中になかったとでも言わんばかりに、どこか別のところを見ているような目が、今になって気に食わない。表面上はこちらに向けられていても、中身が伴っていないような瞳。籠の中の鳥を眺めるような、その中で何が起きていようが知った事ではないし関係ないと言い切るような、その眼差し。
必死に手を伸ばす。指先で何度も空をかいて、ようやく手から離れていた平鍋の柄を掴んだ。力を振り絞って、落下しながら体を捻る。
「…?」
凪いだ水色に、不思議そうな色が乗る。
それを睨むように見据えて、手に
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