魔導士の弱点
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めり込ませていたはずのナツが、何でもなかったかのようにひょいと起き上がった。
「生きてた奴は……何?」
大したダメージもなく、けろりとして。
「バ…バカな!!!」
「コイツ……本当に魔導士なのか!!?」
「魔導士だよ。頑丈に出来てるがな」
数え切れないほどの魔導士を屠ってきた。そのはずの合体技が、敵を消し去るどころか掠り傷の一つを作って終わる。目を見開いて叫ぶ二人に、口角を吊り上げたニアが言う。
「もういいや、これで吹っ飛べ!!!」
「!!!」
「火竜の咆哮!!!!」
ぷくりと、ナツが大きく頬を膨らませる。両手を筒のようにして口元に当て、そこから吹き荒れ広がるのは竜殺しの炎。相手を容赦なく焼く赤が、屋敷の床すれすれを走る。
「来た!!!!火の魔法!!!!」
「終わった」
―――だが、傭兵二人は怯まなかった。一度目を見開いて、けれど怯むどころか笑みを浮かべて、兄の方が前に出る。
「対火の魔導士専用……兼必殺技!!!火の玉料理!!!!」
呟き、平鍋の底を炎を受け止めるかのように向ける。向けられた底に、放たれた炎が吸い込まれていく。
「私の平鍋は全ての炎を吸収し…」
「!!」
「威力を倍加させ、噴き出す!!!!」
くるりと兄が回る。炎を吸収しながら、放たれたそれよりも荒れ狂う炎を噴き返す。炎が届く寸前でニアが上に飛ぶのが見えたが、ナツの方は避ける暇もなく自らが放った炎に全身を包まれた。
飛び、二階の手すりに立ったニアは眉を寄せる。火の魔導士は得意な相手だとは言っていたが、まさかこういう事だったとは。危うく自分まで巻き込まれるところだった。暑いのは寒さ以上に苦手なのだ。頼みの綱のマーリンもいないというのに、勘弁してほしい。
「妖精の丸焼きだ!!!飢えた狼には丁度いい!!!」
「炎の魔力が高ければ高いほど、自分の身を滅ぼす。グッバイ」
弟が笑い、兄が回り切った体勢のまま背を向ける。既に勝利を確信したような二人がこちらを見上げているのに気が付いて、手すりに腰かけたニアは大きく肩を竦めてみせた。加えて溜め息を一つ。
次はお前だと、飢えた狼の目が告げている。その目の中にこちらに対する慢心が透けて見えた気がして、水色の瞳をすっと細めた。
「何だ…?」
「いや、これで傭兵とは笑わせるな、と。攻撃は馬鹿正直にも程がある一直線、その上相手が倒れたのかを確認もせずに背を向けるなんて……自ら背後を敵に渡してどうするんだ?」
口元には緩やかな笑み。内緒話でもするように唇に人差し指を添えてみせれば、怪訝そうな中に馬鹿にされた事に対する苛立ちを混ぜた顔をする二人。
ああ、駄目だ。ここまで言ったというのに行動が伴わない。先ほどまでの戦いはもう既
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