第53話<お盆休暇>
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高さんと頷き合って当然の如くといった風に指示を出し始める。
まずは墓参りの手順……掃除、献花、それから線香と、てきぱきと指導をする。
艦娘たちは最初はぎこちない感じで、順番に線香を手向けている。
それでも結構、彼女たちは神妙に従っている。やはり、こういう伝統行事には礼を持って接する気持ちはあるらしい。誰一人として嫌がったり嫌悪感は出さない。
ちなみに祥高さんは当然だが、山城さんや龍田さんも墓参の手順は知っているらしい。なるほど彼女たちに関しては違和感が無い。そういえば青葉さんは知的に、そして利根も感覚的に墓参の礼儀を知っているようだ。
私は妙に感心した。
(やっぱり、お前たちは日本の艦娘なのだな)
周りの墓参の人たちにはチラチラと私たちを見ている。何となく場を乱している感じもあって、ちょっと申し訳なかった。海軍のイメージが下がらなければ良いけど。
さすがに艦娘が12人も居ると時間が掛かる。ようやく私の順番が来る頃には、かなり汗をかいてしまった。
それでも私は線香を手向けて墓前でしゃがむと静かに手を合わせた。
ここは母方の先祖代々の墓だ。私のお婆ちゃんも入ってる。
「いつまで、かかるのじゃ?」
「シッ」
「悪いな利根……今終わるよ」
私が応えると「ひっ」という利根の短い叫びが聞こえた。まさか私が反応するとは思っていなかったらしい。お前も意外と真面目な性格だな。
さほど時間は掛けないつもりだったが墓前で手を合わせていると、いろんなことが走馬灯のように頭を駆け巡る。黙祷を捧げると、まるで何かに包まれるような妙な感覚になった。
その気配を感じたのだろうか? 艦娘たちも……いや、周りの人たちも急に静かになったようだ。
そうか……軍隊の指揮官の位置というのは、目に見えない世界までも統率する権限があるのだな。そして数分間、墓前では静かな時が流れた。
潮が満ちるような軽い充足感と共に私は、ゆっくり立ち上がった。
まだ目は閉じていた。先祖と、この墓地と、そして境港全体から何かが伝わってくるような感覚が続く。
そして私は最後に墓前で一礼をした。
私は、ゆっくりと目を開けた。日差しが眩しい。
「終わったな」
何か、肩の荷が降りた感じがあった。
一通り終わって、さっさと振り向いた瞬間だった。
「お前も来てたのか?」
聞き覚えのある声……あれ?
「お母さん?」
そこには母親が立っていた。
……てことは?
「……」
その隣には、正真正銘、私の父親が居たのだ。
(あちゃー)
私は艦娘を12人も従えて面倒な状態なのだ。ちょっと焦る。
だが……と思い直した。今日は祥高さんという強い防壁があるのだ。
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