巻ノ九十四 前田慶次その十三
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「存分にな」
「それでは」
「ははは、酒を飲むのも傾きじゃ」
慶次はその傾奇者の顔に戻って言った。
「ふんだんに飲もうぞ」
「そうされますか」
「三人でな」
「実はそれがしもです」
幸村は飲みつつ慶次に答えた。
「酒については」
「かなりじゃな」
「はい」
飲んで笑みを浮かべて言うのだった。
「好きでして」
「ははは、そういえば都でもな」
「よく飲んでおりました」
「そして今もか」
「はい」
まさにというのだ。
「こうしてです」
「よく飲んでおられるか」
「九度山でもよく飲んでおります」
流されているそこでもというのだ。
「十勇士達と共に」
「その通りです」
伊佐も微笑んで慶次に話す。
「我等よく殿に相伴させて頂いています、いえ」
「友、義兄弟としてじゃな」
「絆を確かめ合う様にして」
「共に飲んでおるか」
「何かあれば飲んできましたし」
それにというのだ。
「これからもです」
「今の様にじゃな」
「飲んでいきたいです」
「実は一人で飲むことはありませぬ」
幸村はこのことは断った。
「元服しこの者達と共にいる様になってから」
「十勇士の者達とか」
「飲む時は常にです」
「共にか」
「そうしております、こうして飲んでいますと」
十勇士、家臣であると共に友であり義兄弟である彼等というのだ。
「実に楽しいので」
「だからじゃな」
「はい、よくです」
まさにというのだ。
「飲んでおります」
「そうした意味での酒好きか」
「一人で飲むことはありませぬ」
実際に幸村はこれはほぼないと言っていい、とにかく酒を飲む時は誰か特に十勇士達と共に飲むことが多いのだ。
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