第三章
[8]前話
「お陰で今じゃ店の看板娘だ」
「ああ、そうだな」
「じゃあこれからも働いてもらうか」
「頑張ってもらうんだな」
「そのつもりだ」
笑ってこう言うのだった、だが。
かをりは自分の学校での評判を自覚しているのでだ、ある日親父に対して閉店をして掃除をする時に尋ねた。
「あの、私がいいんですか?」
「いって何がだい?」
「はい、私みたいなおじさんみたいな娘で」
仕草も服の着こなしも実にそうした感じだ、肉体労働を行う中年男性のそれと言っていい。
「全然女の子らしくないよ」
「ははは、スカートを穿いていてもだね」
「はい」
見ての通りという返事だった。
「仕草もガサツで趣味だってそうで」
「やってるサイトの更新だよな、趣味は」
「阪神タイガースの」
応援サイトを運営している、文章はかろうじて女の子のものだ。
「それです、イカ焼きとかも好きで」
「乙女チックは苦手だって言ってるな」
「実際に。読む漫画もマガジン系で小説はハレーム系ラノベです」
そうした趣味の話もした。
「本当に女の子らしくないですけれど」
「いいんじゃないか?」
親父は自分のことを話すかをりに笑って返した。
「別に」
「いいですか」
「乙女な女の子がいてもおっさんみたいな女の子がいてもいいだろ」
そのどちらもというのだ。
「だからな」
「おじさんみたいでもですか」
「昔はオヤジギャルって言ったな」
「オヤジギャル?」
「ああ、おっさんみたいな趣味で仕草の女の子を昔はこう呼んだんだよ」
親父は自分が若い時にいた女性のことも話した。
「もう使わない言葉だけれどな」
「オヤジギャルですか」
「そうさ、それはそれで人気があったからな」
「だからですな」
「それがいいだろ、というかな」
「というか?」
「それがいいんだよ」
そうだというのだ。
「かえってな」
「かえってですか」
「お好み焼き屋は飾らないだろ」
そうした趣だというのだ。
「気取ったお好み焼き屋とかないだろ」
「はい、それは」
「だからな」
「これでいいですか」
「ああ、いいさ」
笑ってかをりに話した。
「うちみたいな店にも合ってるからな、だからな」
「私は私のままでいいですか」
「そうさ、じゃあこれからも頑張ってくれるかい?」
「はい」
かをりは笑って答えた、こうした話題ではじめて笑って答えた。
「それじゃあ」
「これからもな」
「アルバイト頑張ります」
「そうしてくれよ」
「このまま」
かをりのままでと答えた、そして次の日もその次の日もだった。かをりはかをりのまま頑張った。ありのままの彼女のままで。
だがそこがいい 完
2017・6・25
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